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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 浅草サンバカーニバル
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アリスンの過去

 早々に潮流がうまれた。

 アリスンが先生に媚び売ってるだの、ひいきされてるだの、調子に乗ってるだの、創り上げられたキャラクター像は一瞬で学年全体に広まっていた。


 元々目を引く外見だったため学校内で知られていた存在だったこともあり、噂の広がりと定着、そしてその後に発生するイジメの浸透は早かった。

 当時をそのように語るアリスンの語り口からも窺えたが、イジメをおこなった生徒は悪いが、配慮も考えも足りていない先生の安直さが不幸を招いていると思った。



「それはもう、ごりっごりにいじめられたわ。誰かがわたしを無視しようってなれば、まだスマホも持たされていないのにグループチャット並みの速さでみんなに無視されるようになったよ」



 ひいきしたと評されるようになったその先生は、熱いタイプだったらしく、すぐに学級会を開き、生徒に真摯に詫び、これを機にどんなことでも言いたいことがあれば何でも伝えてほしいと、無記名のアンケートを募った。


 かつて人気者だった自信があったのかもしれない。

 或いは、正面から向き合えば子どもたちは心を開いてくれるという幻想でも持っていたのか。



 その先生の思惑がどうだったのかわからないが、一度先生に対し心を閉ざす空気になった集団は、一個の大きなうねりのようであり、多数の思惑の集合体でもある。

 例え何人かは好意的に思っていたとしても、全体的な空気が「あの先生ナシだよね」となっていれば、総意として「ナシ」になる。

 しかし、意見を書くのはひとりひとりだ。たくさんのひとりひとりから、辛辣に否定されたその先生は、失意の末辞めてしまったそうだ。


「なに傷ついてんのよ! 乙女か! え? みんな僕のこと嫌いなの? ショック―、じゃねーわ!」


 当時のアリスンの心境らしい。

 それはそうであろう。打たれ弱いにもほどがある。


「勝手に適当な発言して、勝手に生徒に期待を持って、勝手に失望して、勝手に辞めてくんだから、勝手な人でしかなかったんだろうけど、残されたわたしはどうすれば良いのって感じよね」


 先生と違い、小学校を辞めるわけにいかなかったアリスンは、学校に行かないという選択を取り始めることになった。


 アリスンがその学校に転校してきたのは例によって父親の転勤のためだ。

 新店舗立ち上げから軌道に乗るまでの間は次の引っ越しは無い。

 見込みとしては一~ニ年後ということだった。長ければ中学に上がるまでこの小学校で過ごすしかない。しかし、アリスンは悲嘆していなかったという。


「『あーあ』と思ったけど、そんなに深刻には考えなかったな。

引っ越しが多かったのが初めて良かったと思ったよ。だって、長いとはいえ二年も経てば誰ともかかわらないんだし、引っ越ししてきたばっかで仲良いひともいなかったし」


 まあ、修学旅行いけないのは残念だったけど、とそこだけ少し寂しそうに言っていた。


 学校の承認を得ていたのかは不明だが、先生は学級会で正式に詫びたことで、自らを原因とした生徒間のいじめが勃発していることを認める形となっていた。

 そして、鎮火できずに退職したというところまで踏まえ、学校はアリスンに対して負い目があった。アリスンの自宅での学習を認め、事情を最大限考慮することになった。

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