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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 浅草サンバカーニバル
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アリスンと

 サンバの音源データやCDは一般的な日本の音楽に較べると入手しにくい。検索さえ難しい。

 リオのカーニバルで使用された、カーニバル参加『エスコーラ』(サンバチーム)が使用した『サンバ・ヂ・エンヘード』(テーマ曲)は、年ごとにCD化される。こちらは日本の大手CDショップでも手に入れやすい。が、それでも古いものは入手しにくくなる。

 曲名がエスコーラ名+西暦で記載されている場合もあり、聞きたい曲がどのエスコーラの、いつのサンバ・ヂ・エンヘードなのかを知っていないと該当するCDを探し出せない。

 アリスンが好きだと言った曲は2013年のCDに入っている。他にもわたしが好きな曲が入ったCDをいくつか貸すことにした。



 練習までまだ時間がある。

 時間までおじいちゃんのお店で扱っているほうじ茶にコンビニで買ってきたスイーツを合わせ、おしゃべりして過ごすことにした。

 冷蔵庫から持って来た冷たい麦茶と、運動前だからと一応持って来た魚肉ソーセージもある。

 BGMはサンバ・ヂ・エンヘード以外の曲や、ボサノバで踊ることもあるので、ゆきえさんが作ってくれた練習曲ベスト集だ。



「アリスンはなんでバンドやろうと思ったの?」


 家族のことまで話しているのに、基本的なことをまだ訊けていなかった。


 アリスンはサンバに興味を持ってくれているが、本来はバンドをやりたくて軽音部に入っている。

 有働くん、名波くんもそうだ。

 主従は違えないように気を使いつつも、みんながサンバに、より傾いてくれたらうれしいと思っている。


「わたしさー、小学校の頃、ちょっと不登校だった時期があるんだよね」


 意外だった。


「暗い話になっちゃったらごめんね! 軽い感じで聞いてほしいんだけどさ」


 うん、全然そのつもりー! と、頷いたわたしの笑顔はぎこちなくなかっただろうか。


 実際想像つかないくらい今のアリスンは明るく元気だし、小学生どころかちょっと前の中学生の頃のわたしだって大概だし、アリスンが不登校だった過去があっても全く関係なく友達でいられる自信しかないが、単純に意外過ぎて驚いてしまっている。

 それを引いていると誤解されたくなかった。


「わたし、見た目良いじゃない?」

 うん、そう、思うけど、すごいというかさすがと言うか、なかなか自分で言い切れるセリフじゃない。


「小学校の時もまあ、男の子にもちょっとモテたけど、大人も褒めてくれること多くてねー。

でも、先生が生徒の容姿を安易に褒めちゃだめだよね。まして特定の生徒をさぁ」


 それが若くて人気者の先生なら、良くない結果が待っているのは容易に想像できた。


 転校早々、目を見張る容姿の生徒を嬉しそうにクラスの同級生に紹介し、学校の案内などを別の生徒にお願いするときも、アリスンをダコタ・ファニングやエマ・ワトソンに例え、

「そんなスターみたいな子を案内できるなんて羨ましいなぁ」

 などと無邪気か冗談かはわからないが、言われた生徒として見れば、状況や本人の機嫌次第ではイラっときたのも仕方がなかったのかもしれない。

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