わたしのこと
じゃれ合いながらも、軽く笑い飛ばすには少し重めのエピソードを披露したふたりは、好きでしゃべった、バンド組んでくれたわたしたちには、動機となった源泉を知ってほしかった、だから、この流れは無理に引き継がず、好きなことを喋ってよとわたしたちに話を振った。
アリスンが、えー、どうしようかなーとにこにこしながらこちらを見てきた。
わたしは話したいことは決まっていた。アリスンに先に話して良いと聞くと、良いよーと微笑んでいる。
「じゃあ、好きなことって言われたけど、わたしも家族のこと話すね」
わたしは両親の離婚のこと、離婚後はおじいちゃんの家で、おじいちゃんとママと三人で暮らしたこと、ママは最近再婚して、今はおじいちゃんの家の近くにアパートを借りてママと再婚相手とわたしの三人で暮らしていることを話した。
おじいちゃんはサンバチームの『ソルエス』の創設メンバーのひとりで楽器をやっていること、ママは創設時からダンサーとして所属していて、わたしも生まれて歩けるようになってからはダンサーでメンバー入りしたこと。ママの再婚相手も『ソルエス』で楽器をやっていること。
おじいちゃんはお茶屋さんを営んでいて、ママは店舗などのデザインや設計をするフリーのインテリアプランナー。ママの再婚相手は市役所の課長さん。
などなど、家族のことを特にサンバに関することを中心に話した。
普通か特殊かで言えば、特殊な家族かもしれないけど、毎日たくさん話をして、毎日楽しかった。
でも、いっとき、喧嘩しているわけでも嫌になったわけでもなく、ただタイミングが合わないってだけで深い理由はなかったのだけど、結果として家族間であまり会話がなかった時期があった。
あるきっかけがあって、わたしがママに甘えていないことを認識した。
子どもがきちんと甘えないと、親は、特に若い親は、子どもを正しく甘えさせ、心を健全に保たせる親としての経験を積めなくなってしまう。
だから子どもはちゃんと甘えた方が良いと言われたのだ。
それで意識してママと話すようにしたら、元々ママのことは好きだったけど、ママからの愛情を感じられるような気がして嬉しかった。
その経験があったから、ママの再婚相手や、今は少し離れて暮らしてるおじいちゃんとも、意識して話すようにした。話せば話すほど、相手のことがわかり、わたしのことがわかってもらえたように思え、なんだか安心するのだ。
だから、今日のこのみんなとの話もとても大切だと思っている。
だから、わたしの胸の裡をなるべく伝えたいと思った。
今の家族は大好きだし、とても大事だ。
でも、幼い頃別れた、今は顔も思い出せない本当のパパのことをふと考える時がある。
離婚したばかりの頃、ママはわたしに謝りながら、絶対に護ると言っていた。そんなママを、わたしも大切にしたいと思ったし、ママがいればそれで良いとも思った。
けど、パパがどんな想いを持っていたか、わたしは知らない。
わたしをどう思っていたのか、出て行くことになって、どう考えていたのか。
そこには知らない方が良い答えがあるのかもしれない。
それでも、今のわたしは、パパと話してみたかった。
話すことでお互いを、お互いの気持ちや考えを、交換できると知ったから。
わたしは家族のことを、その思いも含めて話した。
ママと話せて良かったこと。パパと話してみたいと思ってること。
有働くんと名波くんは、相槌を打ちながら、でも決して適当なことは言わずにわたしの話を聞いていた。
どう思ったのだろうか。
ふたりがそれぞれのお父さんと確執があるのはわかるし仕方がない。でも、その相手と話せる機会を作れる環境にいるのだ。
持っているが故に気づかない、ありがたみや尊さに、気づいてもらえたら良いな。




