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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 浅草サンバカーニバル
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有働くんからの提案

 有働くんたちは、この部活でのバンド活動について、ストイックにプロを目指すわけではないが、やるからには一定の成果を残したいと考えていた。

 その先の選択肢に、プロへの道があっても良いし、学生や仕事を続けながら音楽で収入を得るのも良い、活動の実績を基に次の進路に繋げるのも良い。もちろん、趣味で音楽を続けるのもOKだ。

 要は自らの人生の選択肢を広げるために、部活動で一定以上の成果は求めたいのだと言う。


 しかし、部内だけでもこれだけの人数がいる。

 学生と言う枠内に限定したとしても、その中で何かを残すには、抜きんでた技術やセンスが必要になる。通常ならば。


 そのエッジで戦えるのが一握りの選ばれた者だけだとするなら、それ以外のその他大勢である自分たちに居場所はないのかと問われれば、断じて否であると強く言っていた。

 戦略で際立つやり方があるはずだと、有働くんは熱っぽく語った。何らかの強い想いがあるのだと思った。


「嫌な気持ちにさせたらごめん。

埋没しない個性、他との差別化、もっと言えば目立つための要素として、アシェルさんの見た目を利用したいって思惑がある」


 その代わり、肝心の内容はわたしたちのやりたいことを軸にして戦略を立てるし、足りないパートは自分たちでカバーする。

 作詞、作曲、アレンジもできる。ギターとベースなら教えられるし、私物の機材も共有できると、まさに利益で結び付く取引のような提案だった。有働くんの家にはひと通りの楽器や機材が揃っているのだそうだ。

 でも、この計画にはわたしは関係がなく、わたしの目的にもこの話はあまり関係なさそうだ。


「そう言うことなら、わたしは……」


「それは困る!」

 わたしが辞そうとする言葉を言い切る前に、有働くんに遮られた。


「文樹さんも戦略に入ってるので、ふたりと組ませてほしい。文樹さんの立ち居振る舞いは華やかだから、フロントメンバーで使いたいんだ」


 使うという表現に、戦略的にバンドを立ち上げるという意図が徹底されていると感じながら、やっぱり一緒にはできないなと思った。


「ごめん、わたし学校外でサンバのチームに入ってて、どうしてもそっちが優先順位高くなるの。

いきなりプロは目指さないって言っても有働くんたち本格的なバンド活動する感じだよね? わたし足引っ張っちゃうと思う。

アリスンもごめん、先に言っておくべきだったね」


 しかし、わたしの言葉を聞いた三人はそれぞれに感嘆の声をあげた。


「サンバ⁉︎ 尚良いよそれ! 歌うの? 踊るの? 詳しく聞きたい!」と興奮気味の名波くん。


「ダンサーだよね? なるほど、姿勢や仕草が華やかなのは、そういう背景があったからか……差別化、相乗効果、化学反応……うん、ひとつ新たな個性的な要素が加わるだけで無限のビジョンが思い浮かぶな」と何やら自分の世界に入っている有働くん。


「サンバって楽しそうなやつでしょ? バンドでも活かせたら面白そう! 有働くんがアレンジとかしてくれるって言うし」

 サンバに肯定的で、有働くんが提供するという利益を使う気満々のアリスン。

 見た目を利用されることも特に気兼ねは無いようだ。


「目立たせるということは、当たり前だけど目立つということ。

目立っておいてショボかったら話にならない。だから、目立たせた分だけハードルは上がると思っている。そのハードルは俺と名波で超えられるようにするから」

 有働くんは少し真面目な顔をして言った。


 わたしは、みんながサンバに肯定的で、『ソルエス』の活動に支障なくしてくれるなら、良い話かもと思うようになっていた。

 いつかサンバに活かせるたら良いなとの思いで始める意味ではわたしだって打算的だ。

 であるのに、有働くんの戦略如何では、バントでサンバを取り入れた活動ができるかもしれないのだ。

 合わなければバンドの組み換えや掛け持ちができる気軽さも後押しして、わたしは有働くんの提案に乗ることにした。


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