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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十四歳 コミュニケーション迷子
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新しい衣装

「一息ついたら作業部屋見せるね」


 見せるって言ってもここ開けるだけだけどね、と、実里はわたしにイタズラっぽく微笑んで見せ、隣の部屋との間にある間仕切りドアを引いて開けた。


「うわぁ」


 作業部屋にはたくさんの羽根や背負子、サンバ用のシューズやブーツが並んでいた。

 壁にはコステイロがいくつも掛けられている。作業台には背負子と多数の羽根が乗っていた。作業中だったのだろうか。


「ルイちゃんはこの色よね」


 実里が差し出したのは鮮やかで艶やかな深みのある瑠璃色に染められたキジ羽根だ。


「わー! わぁっ! キレイ‼︎」


 瑠璃色。わたしの色。


 これに関してはわたし発信ではない。

 近所の占い師にママと一緒に観てもらったことがあった。

 ママは離婚したばかりで、早々に恋愛運を視てもらいたいのだと言う。

 子どもの立場で、親の女や男の顔は見たくないなんて意見はあるけど、わたしはママが幸せになるなら再婚は歓迎だった。


 視てもらった結果は、ふたりともここ一年で大きな出来事はなさそうだと言うことと、ママとわたしを色で表した性格診断だ。


 ママはファウンテンブルー。

 歌と踊りを愛す人。自由奔放に生きるのが良いそうだ。ママにぴったりだなと思った。

 わたしは瑠璃色。

 名前を言っていないのに名前と似た色を挙げられたことにまず驚いた。

 人に愛され、信頼され、尊敬されると言う。

 人に愛されるなんて、正にわたしそのものだと、わが意を得たりと興奮した。


 そして確かにその一年は何事もなく平穏に過ごし、しかし数年後、自由に過ごしていたママから、『ソルエス』でバテリアとして『スルド』という大太鼓の奏者をしていたソータ(#松本奏汰__まつもとそうた__#)と再婚すると嬉しそうに報告された時、あの占いは当たっていたのだと思った。


 占い結果の瑠璃色を気に入ったわたしは、色自体に興味を持ち、誕生色や色占い、色の意味なんかを調べたり、そこで得た知識を使って近しい人を心の中で色に当てはめるようになったのだ。

 当然わたしには占いの能力など無いし、オーラが視えるだとか、共感覚だとかは無いのだが、その人の印象や服装などでなんとなく当てはめている。

 しかし、色のイメージと、その人の雰囲気。その色を好むに至る性格は、ある程度リンクしていても不思議では無い。感覚で当てはめているだけだけど、意外と的を射ているのではと思っている。


 はじめてコステイロをオーダーで創るなら、瑠璃色にしたいと思っていた。

 瑠璃はラピスラズリだ。同じ宝石ならダイヤモンドが良かったと思った瞬間もあったが、今では幻想的で神秘的な瑠璃がとても気に入っていた。

 吸い込まれるような深みのある色を身に纏い、どんな表現ができるのか、楽しみ過ぎてどうしようもない。

 完成したら学校につけていってしまいそうなくらいだ。


 細かい要望をヒアリングしてくれた実里は、手慣れた感じでスケッチを描いてくれた。衣装の完成イメージと、それを身につけたわたしの姿だ。


 すごくかわいい!


 これでお願いします! と思わず立ち上がったわたしに、実里は相変わらず笑顔で頷いてくれた。


「楽しみにしててね!」笑顔で送り出してくれた実里は、スケッチを欲しがったわたしに、いくつか絵を描き足して持たせてくれた。ついでに何故かお煎餅の詰め合わせもくれた。何かのショーをやった時にお客さんにもらったのだそうだ。

 まだたくさんあり、わたしがママに持たされたおじいちゃんのお店のお茶と一緒に楽しむので、わたしにも家で同じように楽しんでお揃いにしようと言う提案だ。

 お揃いなどと子どもじみてるが、尊敬しているパシスタから言われるとすごく嬉しい。

 これがファン心理を理解しているスターのやり口なのだろうか。

 わたしも学ばなくては。


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