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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 ふたりのルイ
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当日、パレード前

 お昼が終わると、パシスタはメイクに入る。子どもは大人のパシスタにやってもらっているが、中学生以上はまずは自分でやって、チェックしてもらったり修正してもらったりして完成させる。

 これが結構時間が掛かる。


 ひいもみことも年齢よりは大人びて見えるが、見た目のイメージ通り普段から軽くメイクもしていて、それに違和感もなかった。

 ショーのためのメイクと日常のメイクは考え方から異なるが、使う道具は同じで、ひいとみことは手慣れた様子でメイクを進める。

 わたしも普段から練習はしているが、どうも眉が上手くいかない。と言うか、やっているうちにこれで良いのか、何が正しいのか、良くわからなくなってくる。人に見てもらいながらだと客観的な視点が入るのでやり易い。


 メイクが一通り完成すると、完スタまで残り一時間を切っていた。

 衣装の組み立てなどは終わっているので、後は身に付けるだけだ。時間的には余裕がある。この時間になってくるとみんな緊張感が高まって来ていて、あまり雑談の声は聞こえなくなっていた。


 誰かのアラームが鳴る。

 完スタまで残り五分で鳴るように設定されていたらしい。やはりうちのチームは真面目な人が多い。


 それが合図であったかのように、女性ダンサーたちは朝のミーティング同様に男性バテリアの控え室へと移動をした。


 みんな準備は万全、気合も充分だ。戦の前の戦士のようだと思った。



「みんな、準備はできているか⁉︎」


全員が集まった控室で、ハルが声を張った。


もちろん、いつだって出られる!


『応‼︎』その場の全員が応じる。

 みんなの気合いの乗った声に気持ちが奮い立つ。


 一拍空け、ハルが言葉を続けた。


「出し惜しむ必要はない。感情の解放がサンバの本質だ。みんなの想い、『ソルエス』の情熱! 思うがままに吐き出すぞ‼︎」


 その場の全員が沸いた。


『ソルエス! シェゴウ‼︎』



 ハルの掛け声に、メンバー全員の声が重なった。



 スタンバイエリアに着くと、緊張感と高揚感を混ぜたような気持ちになる。

 それはみんなも同じで、妙にテンションが上がっていたり、はしゃいだりしているが、少し上滑りしているような感覚だ。


 夏の泊まりのイベントではチームのTシャツで衣装を揃えて集団で踊る群舞のパートに出演し、『浅草サンバカーニバル』ではスタッフとして参加していたるいぷるにとって、本格的なデビューはこの『サンスターまつり』だ。

 タンガはまだ着られないが、華やかなドレスで踊るチームで参加している。

 るいぷるは色々なパートのところに行っては、一緒に写真を撮って周っている。

 わたしたちのところでも大騒ぎしながら青春ぽいポーズとやらを取らされて一緒に写っていった。

 今は沿道に集まり始めている観客と撮影会をしている。

 心臓の化け物かと思うが、おかげでこちらの緊張も少しほぐれた。


 周囲を見渡せる余裕ができてきた。

 マランドロたちは、ネクタイやハットの微調整に余念がない。

 さっきと今と、何がどう変わったのかわからないが、何やら満足そうだ。

 アキとウリも今回が本格デビューだが、るいぷると同様余裕がありそうだ。


 ジアンとミカはバンデイラの確認をしている。ミカは少し緊張した面持ちだった。


 普通そうだよね。

 デビュー前は緊張するって。

 あの三人がおかしいんだよ。


 ジアンにとっても、夏の泊まりイベントはカザウを軽く披露するくらいの内容だったので、ミカとのペアで本格的な演技をするのは初だし、カザウとしてしっかりパフォーマンスするのも久し振りである。

 それでも、サンバ歴では先輩である自分が引っ張るつもりなのか、本来はエスコート役であるはずのメストリの背中に手を添えて、何やら話している。


 鼓舞しているのかな。仲良いな。


 ミカは仕事では大勢の前や偉い人たちの前でプレゼンすることもあるらしい。

 結構堂々としていて、演出的でもあるのだとジアンが言っていた。

 求められている成果に対して責任を持つタイプのようだから、相応の緊張感を持っているのかもしれないが、舞台度胸はありそうで、それほど心配はないと思われた。

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