面白サンバ少女
「るいぴっぴの良いところって、硬さと面白さが融合しているところにあると思うんだよねー。
ストイックが、真面目さが、厳粛さが克ち過ぎると、面白成分が減って硬くて乾いた殻みたいになっちゃう。硬いけど割れやすいんだよ」
ストイックで真面目、良いじゃない。
ハイーニャになるのならば厳粛さもアリじゃない?
でも、面白いってどう言うこと? そう言えば亜里沙と愛菜もそんな言い方をしていたような。わたしはギャグとかいうタイプじゃないし、余りふざけたりもしない。完全なる真面目側ではないだろうか。
「るいぴっぴは面白いよ。面白さがあるから、その硬さが愛らしさになるんだから。それを考えたら、面白の方が本体なんじゃない?」
まるで自覚がない。心当たりもない。
面白さが本体だなんて、なんかおめでたい人みたいではないか。
「わたしが一番痺れたのは、あの時かなー。
他のチームの人たちもたくさん参加していたあのイベント。あの時、どこかのベテランぽい人がるいぴっぴに話しかけてきたんだよ。覚えてる?
そのベテランぽい人がさー、るいぴっぴを明らかに子ども扱いして、どんなダンサー目指してるの? なんて訊いてきて。
質問は良いけど、態度がなんかるいぴっぴをおまめさん扱いでさぁ。まあ結構な年齢差ある感じだし、自分の子どもか孫に対して接するようなものだとしたら、悪意はないのだろうけど、その直前のるいぴっぴのダンス見ていたら、心得のあるダンサーなら大人顔負けのダンスに敬意払っても良さそうだよね。
それでもるいぴっぴは真摯に『ハイーニャ目指します』って答えたらそのベテラン、赤ちゃんをあやすように、『まあ! 偉いねえ!』みたいなリアクションしたんだよ」
なんとなくそんな出来事もあったかなぁくらいには覚えてる。
「ベテランが去った後るいぴっぴがぼそっと、『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやかっ! 雀みたいな顔しよってからに』って突っ込んでたの!
えー⁉︎ なにその文豪みたいな突っ込み! センスの塊じゃん、なんてじぇーしーだよ! と末恐ろしさに震え上がったものよ」
近いこと言ったかもしれないけど、明らかに盛っている。わたしは「しよってからに」なんて言いまわしはしない。
「そんな面白サンバ少女がよ?」
誰が面白サンバよ!
「その面白潤いを乾かして、硬くてパリパリになってしまいそうで、勝手ながら危機感を覚えているのです」
人を羽根付餃子のように言いよってからに。あ。
なんて、最近得意になりつつある心の中の迷走を繰り広げていると、るいぷるの声のトーンが少し変わった。




