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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 ふたりのルイ
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イベントの思い出

 わたしたちはマックの二階にある席に陣取って、色々な話をした。

 最初は受験勉強の話だ。苦手なところや問題集のわからないところなど。

 みんなさすが受験生だけあって、参考書や問題集がカバンの中に入っていた。亜里沙は使い込みつつある問題集を開いて、「この問題がよくわかんないんだよね。解答の解説見ても、塾で先生に聞いても、なんかピンと来なくてさぁ」

 数学の問題だった。相似する図形の問題だ。この問題には、覚えがあった。



 今年の夏のイベントの中に遠方で行われるものがあった。

 出演者みんなでバスに乗って行き、宿泊して帰って来る。バス旅行みたいで好きなイベントだ。

 受験生の立場としては、今年は回避かなとも思ったが、やはりどうしても出たくて、勉強道具を持って行って夜は勉強することにして参加したのだった。



「イベントの日も勉強? そっか、受験生だもんね」


 宿泊する旅館の食堂で勉強していたら、お風呂から出て来たウリが声をかけて来た。

 まだ外ではバーベキューをしているはずだが、お風呂の混雑を避けるために早めに切り上げて来たとのことだった。


 ウリはいつも優しい笑顔だを浮かべていて話しやすい。

 ついついわからないところを訊いていた。その時に訊いた問題が、ABCDの四角形の内部に、ふたつの三角形の大きさがイコールになる式が二種類作れるポイントにE点を取るような条件が出されていて、線×線の値や、三角形の面積を求めるものだった。

 亜里沙がわからないと言っているものと同じ種類の問題だ。


「あぁ、これはね……」


 ウリは問題にシャーペンで薄く描きながら、「点Eを出して、三角形をふたつ描き出し、問われている線を登場させて式を出すと良いよ」と説明をしてくれた。

 丁寧な説明だったがよくわからなかった。

 そうこうしていると、バーベキューを終えたみんなが戻って来た。どうやらこの後は食堂で夜通し宴会をするらしい。さすがに勉強は続けられなそうかな? と思っていたら、みんな集まって来た。


「数学? 無理!」とビオラとママは早々に酒盛りを始めてしまったが、意外と色んな人が教えてくれた。


「ウリ、理系の感覚で説明したろ? ルイは文系だろ?」と、アキは文系に翻訳したと言う説明をしてくれた。もっとややこしくなった。


「にいちゃんのはロジカルすぎ! 言葉が難しくなっちゃってるじゃん」


 ミカの言う通りだった。言っていること自体が理解できなかった。まだ丁寧な説明だったウリの方がわかりやすい。


「図形ね。ルイちゃん、薄目で四角形見てみ? なんとのぉ三角形見えて来るやろ?」


 やってみる。さっぱりわからない。


「ちょっと! 適当なこと言わない! ルイ、やんなくて良いからね?」


 ヒトミに怒られたアイジは「適当ちゃうねんけどな。ボクはそれで解いてたし」とごにょごにょ言っている。


「わたしも理系だから、ウリと同じような説明になるかなぁ」


 ヒトミもウリもシステム系の仕事だって言っていたから似ているのかな。


「あ、ハル! ちょっと来てよ!」

 ハルとジアン、るいぷるが入って来たのを見かけたヒトミがハルを呼ぶ。ハルだけでなくジアンとるいぷるもこっちに来た。

 これ、教えてあげてとヒトミがハルに言っている。

 アキは「ハルも理系なんじゃ? ドクターだし」と言っていたが、一連の経緯をミカから聞いたハルは、

「数学は手順通りやれば必ず正解するものだ。理系も文系も関係ないよ。これは……」

 と、何かの裏紙に問題の四角形をフリーハンドで描き、その四角形から抽出されたような表現で矢印をふたつ引っ張り、手慣れた様子でふたつの三角形を描いた。

 それぞれの点に該当するアルファベットを振り、アルファベット二点で表現された線を式に落とし込み、解答を出した。


 説明しながらの作業であったが、さっぱりわからない。まず、説明が早すぎる。


「解いて、ではなくて解き方を教えて、だよ?」


 ジアンが困ったように言う。


「だから、今説明したろ?」


「あ、だめだ。これわかる人特有のやつだ。わからない人が何がわからないのかわからないってやつ」ジアンの呆れ顔の意味が分からないと言う風にハルは不思議そうにしていた。


「こう言うのはね、薄目を」


「それもうボクが言うたわ!」るいぷるが言い終わる前にアイジが突っ込んだ。


「大人がこれだけ揃って、高校受験の問題の解き方を教えられないなんて、学校や塾の先生ってすごかったんだな」とミカが感心していると、お風呂上がりのジルがやってきた。


「盛り上がってるねー! もう宴会始まってるの?」


 ジアンが事情を説明すると、ジルはちょっと見せてね、と問題を取り上げた。

 なるほど、と言いながら、ハルが解いた裏紙にいくつか言葉や記号を書き足す。

 最後にわたしのペンケースからピンクとブルーの蛍光ペンを取り出し、いくつかの図形の線にピンクとブルーの色をつけていく。


「これでわかるかな?」


 ジルが見せてくれたハルの解答は、いつのまにか解き方を図示で解説した資料になっていた。


「すごくわかりやすい!」


 これをきっかけに、この種の問題のコツを掴むことが出来た。だけではなく、『ソルエス』には、そしてわたしの周りには、たくさんの、いろんな能力やスキル、職業や背景を持った大人たちがたくさんいる事実を改めて認識し、自分はとても恵まれていると実感したのだった。

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