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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 ふたりのルイ
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ともだち

「最近忙しそうだね」

 授業と授業の間の休み時間。

 前の席の亜里沙は後ろを向いてわたしの消しゴムをいじっている。

 確かに、最近は亜里沙や愛菜と過ごす時間があまりなくなっていた。亜里沙や愛菜も受験勉強を始めているため、遊びに行けないのはわたしの都合が合わないだけではない。

 亜里沙も愛菜も、単願推薦で受験をするのでハードルは下がっているが、一方で万にひとつも落ちるわけにはいかないという状況でもある。全く受験勉強をしないわけにはいかず、塾の日を増やしていたし塾のない日も家で勉強をするようにしていた。

 とは言え、帰りくらいは一緒に帰れるはずだが、最近は学校後直接練習や実里の家に行くこと(一度帰らずに別の目的地に行くのは学校で禁止されていたが)が多くなり、帰りも一緒にならなくなっていた。


「もうすぐ『サンスターまつり』だからね。

練習やリハーサルは詰まっているけど、準備とかは落ち着いて来ているから、もうあまり直接出かけるみたいなことは無くなって来るよ」


「忙しそうだけど、なんか楽しそうだよね」


 それはそうである。そもそも好きなことをやっているのだから。


「そう言うけどさ、前はなんか思い詰めたような顔をしてた時もあったよ?

好きなことしてるはずなのに」


 それもそうであろう。

 迷走したり遁走したりと、目的地につかない動きをジタバタとしていた日々は辛かった。いよいよ自己否定に自己否定を重ねるようになり、浮上できるイメージが全く湧かなかった。


「まあ、楽しくやれてるなら良かったよ」


 亜里沙は安心してくれている。辛かった日々、亜里沙は、そして愛菜も、わたしのことを本気で心配してくれていた。わたしはふたりと話をして、救われたのだ。今のわたしを見て、安心してくれたのなら、わたしも嬉しい。

 けど、亜里沙は少し寂しそうでもあった。


「亜里沙は今日塾無い日だよね? 家で勉強する?」


「うん、まあその予定」


「帰り少し寄り道してかない? 愛菜も今日は塾なかったはず。少し息抜きした方が勉強も効率良いよね」


 うん、行こう! と亜里沙は早速愛菜の席まで行って何やら話をしている。

 ふたりともこっちを向いて、亜里沙は腕で大きな丸を作った。

 放課後、わたしと亜里沙は愛菜の机に行った。愛菜は帰る準備をしながら、スタバに行きたいと言っている。

 新駅ができる予定のエリアの開発は着々と進んでいて、駅からは少し離れるが近くの県道沿いにも開発の手は波及していた。

 いくつかの店舗が新たにできていて、その中のひとつにスターバックスがあった。愛菜は季節限定のフラペチーノが飲みたいらしい。わたしも飲みたい。

 けど、今はお金がほとんどない。

 ふたりに救われたあの日、ふたりにいつかスタバを奢ろうと心に誓っていたのに、そのチャンスが目の前にあるのに、金欠という情けない理由でチャンスを不意にするばかりか、愛菜の希望も叶えられそうにない。


「ごめん、今お金あまりなくて。マックでも良い?」


 マックのMサイズのドリンクくらいなら買えそうだった。亜里沙がスタバはまた別の日に行こうよと愛菜を説得してくれている。


「あー、マックも良いね! 巨峰か何かの限定シェイクなかったっけ?」


 ふたりは変に「奢るから」とか言って来ないから好きだ。だからお金がない時は素直にお金がないと言える。

 でも、使うべき時に使えるお金がないのは問題だ。結果として、愛菜の希望を叶えられず、わたしの誓いも果たせなかった。

 高校に入ったら、しっかりバイトしよう。

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