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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 ふたりのルイ
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ステップアップ

 アキは言った。

 もちろん、気持ちを率直にぶつける必要がある場面はある。

 理屈ではなく、感情を発露させた方が良い場面も。

 それでお互いを識る、正に相互理解を為せる場合もあるだろう。ただし、その場合は相手と噛み合ってなくてはならない。

 比較的融通の利く、どんな場面でも通用するのはやはり質問を含めた会話を重ね、相手を把握しこちらを理解してもらう方だと。


 質問をするならできそうな気がした。

 なんなら「練習しようよ!」なんて命令みたいな言い方より全然言いやすい。アキに訊いてみて良かった。


 これまで、実里に言ってもらってわかった気になっていたけど活かせていなかったのは気の持ち方、心の在り方だ。

 目的を違える必要はない。

 仲良くなろうと気負うのではなく、結果そうなっている状態になるために、まずは自分がしたいことをしたいようにするのが良いのだと。

 それを、周りを巻き込んでうまく伝えていく手法が足りていなかった。実里の言っていた、引き出しの少なさというのが、手法のことだ。

 アキから訊けたのは、その手法だ。


 そういえば、アキとの会話も何気ない質問から始まった。

 その積み重ねを経て、スムーズにアキの仕事の話や心情についての話を聴けたし、わたしの悩みを聴いてもらい、意見を訊けた。

 本当に自然で、特に無理をした箇所などは無かった。むしろ楽しくさえあった。

 やり取りの積み重ねに楽しさを見出したわたしは、調子に乗って訊いてみた。


「ところで、くれるって言ってた香水って元カノの? ディオールでお揃いにしてたんだね」


 わたしのレベルではまだ訊けないから、いつか訊こうと思っていたことだ。

 手法を辿々しくも身につけ、レベルが上がった今のわたしなら、いけるんじゃないかな? なんて思った。


「昔のことだよ。たまたま誕生日が近かったんだ。で、同じ売り場で買って贈り合った。使い切る前に別れるなんて思ってなかったけどな」


 香りは記憶に結びつくから、持っていかなかったのかもなぁ。思い出したくもないのか、さっさと次に行きたいのか。

 比較的アクティブな人だったから多分後者だと思うが、もし前者だったらせつないなと、懐かしむように言っている。カラッとした言い方で、相手への感情は正も負も無いようだった。


 わたしの問いには少し戸惑ったようだが、やはり子ども扱いして誤魔化したり、はぐらかしたりはせず、起こった出来事や状況をそのまま伝えてくれるアキに、子どもを大人と同列に扱ってくれているような気がして心地よさを覚えた。


 アキ自身はその時に贈られた香水の香りを気に入っていて、特に衒いもなく使い続けているらしい。

 そもそも仕事の時はつけていないそうだから、詳しくはあってもあまりこだわりはないのかもしれない。


 まあそのような経緯があったし古いものでもあるので、改めて、それでも良いかと訊かれ、それでも欲しい! と答えた。


「愛、屋烏に及ぶってことにはならなかったんだねぇ」


 人は人、物は物、事と事を分けて論理的に考えられそうなアキらしいなと思った。

 なんで別れたのかは別の機会に訊くとしよう。


「中国の故事? 意外とそう言うの詳しいんだな」アキは少し驚いていた。


 ジアンの真似をして本はたくさん読んできたからかな。

 言葉はそれなりに知っている方だとは思っている。ハルやウリが練習に来るまでまだ時間がありそうだ。ふたりが来るまでアキと雑談を続けた。

 アキは新しい仕事をどうするかはまだ具体的に決めてはいないが、いくつか候補はあるらしい。

 ジアンやるいぷる、アイジが務めている会社も候補に挙がっているのだという。その会社の社長が声を掛けてくれているのだそうだ。

 もしそうなったら、その会社はほぼ『ソルエス』ではないか。

 なんとなく楽しそうだと思った。

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