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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十五歳 ふたりのルイ
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アキのこと

 結果だけ見れば綺麗な収まり方をしたが、俺たちにとって仕事は実は手段でしかなく、当初は別の目的があったのだと、アキは少し声を落として話を続けた。


「既にあるものなら、潰すより使った方が効率は良いからな。街の発展を目的とした仕事なら、より良いプランだ。

でも、俺たちはこの商店街を潰すことを本当の目的としていたんだ」


 故郷なのに?


「故郷だから、かな。

理由らしい理由なんてない。と言うより、説明して理解してもらえるような理由なんてなかった。

子どもの頃、どうにもならなかった理不尽に腹を立てて、その怒りを街にぶつけたかったのかもしれない」


 街を憎むような怒りなんてわたしにはわからない。

 でも、子どもがどうにもならない理不尽を抱えて、その吐き出し口を求める気持ちはわかる気がした。


 わたしは意図をしていない結果がもたらした絶望とやるせなさを、放棄という形で放出した。

 キレた子どもが、もうイイよ! と投げてしまうように。その後拗ねて取り付く島がなくなってしまうように。


 思い通りにならない自分に、イメージ通りとはとても言えない不甲斐ない自らの能力に、ぶつけようのない怒りを抱えたまま、ストイックにノペを踏み続けるというエネルギーを疲労に換えることで消せたと思おうとしていた。


「その後、思うところがあって。

まあ己のくだらなさが身に染みたと言うか。

美嘉たちが頑張って創り上げているものを壊してまでやるほどの価値は無いなと思い直した俺とウリは、商店街との提携路線で市政や都市開発側により大きな利益になる計画を考えて、合意を取り付けたってところだ」


 たぶんアキは、今自分にとって痛いところ、恥ずかしいところを話してくれている。真剣に聴こうと思った。


「みんな利益になるならそれで良いじゃんと思われるかもしれないが、大きい組織が一度動き出したら、方向を転換するだけでも多大なエネルギーがかかるんだ」


 これはなんとなくわかる。

 たかが学園祭のクラスの出し物でさえ、一度決めたお化け屋敷を、百鬼夜行カフェに変更するなんてことになったら、結構大変だろう。誰もがカフェの方が魅力的だと思っていたとしても。

 それが街や企業や市政なんて規模になったらどれほど大変かなんて想像もできなかった。


「俺とウリはそれぞれ会社と市に掛け合って、どうにか路線を変えさせられた。

まあ本来はそれで終わる話だ。方針を変えさせるために、変えることへのロス、コストに関する責任を取るべく自らの進退を賭けるような言い方もしたが、実際に責任を取れなんて言う話にはならなかった。ドラマなんかではよく責任を取れだの、責任をとって辞めますだの言っているようなシーンを見たことあるかもしれないけれど、実際の会社は規則に違反でもしない限り、そう簡単に個人に責任を求めたりしない。

今回のケースでいえば、状況を見ての方針転換というだけで、ミスですらなく、結果としては会社に当初より大きな利益を残せたしな」


 ただ、自身の気持ちの整理がつかなかったのだと呟くように言ったアキの顔は、後悔と諦めと、それを超えたような吹っ切れた様子が混ざっていて、これが複雑な表情というやつかと思った。


「商店街も市も都市開発も住民も、みんな利益が出て、うまく納まって良かった。

なんて思うには、やっぱり俺が抱えていた動機は恥ずかしくてさ。

せめてケジメでもつけないと立ち直れないと思ったんだ。これも自己満足だけどな。

会社のやり方にも強引というか、ズルいやり方をしていたこともわかって、続ける意義を見出せなくてね。

まあ、社会人としてきっちり引き継ぎをした上で、辞めることにしたってわけ」


 よく分かった。

 内容には難しいところもあったけど、アキが仕事よりも想いを優先しているのがとてもよくわかった。

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