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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十四歳 コミュニケーション迷子
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実里がくれたもの

 計りかねているわたしの内面すら、きっと実里にはわかられてしまっているのだろう。

 実里はわたしの心をほぐすように、ゆっくりと言葉を続けた。


「言葉にできないことは、言葉にできないままでも良くない?」


 真剣に聴いてるわたしに、実里はそんなに固くならないでと、手をつけずにいたお土産にママが持たせてくれたケーキを勧めてくれた。


「甘いものを食べながら、気楽におしゃべりをしましょう」


 言いながら先にケーキを一口食べてみせた。

 わたしも倣って口にする。甘さが心をほぐしてくれる。もしかしたら、実里の言う真面目さがために、固くなっていた身体も。


「色々考えちゃうのは良いと思うよ。

まだ定まっていない想いや感情を、言葉にできれば自分にとってそれがどう言うものであるのかを認識する助けになると思うから」


 でも、と実里は言葉を続けた。


 その時点で言葉にできないなにかを、躍起になって無理になんらかの結論を与える必要はないのだと。


「その時点で答えが出せないものなのに、考えることに固執してしまって堂々巡りになってしまっては本末転倒じゃない?」


 つまり、考えても答えが出ないことを考えすぎてしまっていた。


 その結果、集中を欠き、パフォーマンスは硬くなり、悩みは解決しないまま、正解はわからなくなり、今までできていたこともどうしたら良いのかわからなくなり、いよいよ自己否定に勤しむようになっていたのだろうか。


「友達になるならないはタイミングもあるし、相手次第だし、そうなれたら良いなー程度で捉えておけば良いんじゃないかな」


 実際、パフォーマンスをより良くするために、連携を強化しようとの思いから始まった考えだ。

 その結果が自らのパフォーマンスの低下ではなんのためにやっているのかわからない。

 そもそも、成果のために友達になると言う動機からして不純だ。相手にも失礼だと思えた。


「わたしは、ルイちゃんは真面目で素直な良い子だと思うよ。

ハイーニャになるのにもし人格が必要だとしたら、ルイちゃんにそれが無いとは思えないけどな」



 今日、わたしはどれほどのものを得たのだろうか。


 パフォーマンスの感想。


 よりわたしに合うように調整されたコステイロ。


 よく冷えたお茶と甘いケーキ。


 実里と過ごした時間。


 深い迷宮から抜け出すヒント。


 そして、強張った心を蕩かす言葉。


 挫けてしまった心を再起させる気力。


 ここから先へ向かうための、勇気。



 結論の出ないことをごちゃごちゃ考えるのはやめよう。


 できなかったことを許容しよう。


 やってみないとわからないなら、やってから考えよう。


 意識しすぎていない時の方が、多分わたしの良さが出ていると思うから。



 帰り道、荷物の衣装は重かったが、わたしの足取りは軽かった。


 実里の家を出る間際、彼女は最後に、ちょっとしたコツのようなものを教えてくれた。


「きっと、まだまだ引き出しが少ないんだよ」


 失敗なんてないのだから、今は考えるよりも行動をしようと言うことを。


 自分が思う自分像と、人が思うわたし像は違う。


 わたし像は人によっても違う。


 色々な人と、色々なタイミングで交流を図れば、自分の頭の中で考えてるだけではわからないものも見えてくるのではないか。そしてその先に、関係が築かれていくのではないか。


 遠回りなようだけど、それならできる気がした。


 改めて、思う。

 チームが主催してくれるイベントはなるべく出よう。


 話しかけるとか、友達になるとか、そんなミッションは課さず、ただ楽しもう。


 他のチームが主催するイベントや、練習などにも出てみよう。


 亜里沙や愛菜とももっと遊ぼう。



 決めてしまえば心は軽やかだった。


 気負わなければどうと言うことのないことばかりだった。当たり前である。

 遊びに行くのに何かを課している方がおかしいのだ。


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