表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十四歳 コミュニケーション迷子
20/101

実里との時間

「短期間でずいぶんこなれてきたね」


 この数ヶ月、わたしと共にあった衣装を見て、実里は嬉しそうだった。

 元々わたしの身体に合わせて造ってくれた衣装だが、いくつかのイベントでの使用を経て、身体に馴染んできていた。


 丁寧に使ってくれて嬉しいとも言ってくれた。


 道具に敬意を払うのは当然である。まして衣装は自らの身体の一部と言える。

 身体と同様に、あるいは違和感を直接伝えてくれる身体以上に気遣う必要がある。


 実里は補修しながら、細かいところを調整してくれた。

 製作から半年も経っていないが、クリアンサスや学生ダンサーの身体は日々成長している。多少はその成長を加味した造りにしているが、身体とのギャップが余りにもあるとパフォーマンス中に外れてしまったり、余計な痛みを生じさせてしまったりすることもある。

 怪我につながる可能性もあるため、なるべくは身体に合わせて造られる方が良い。そうすると、成長速度によってはすぐに、せっかく身体に合わせたはずの衣装が、合わない衣装となってしまうのだ。適宜サイズを合わせられるなら、それに越したことはなかった。



 あまり変わってないと思うけど、と言いながら実里の採寸に身を委ねていると、念のためねと言いながら、こんなことを言っていた。


「身体のサイズは数字に表れるほどではないけど、身長は少し伸びたような印象を持ったよ。あとは表情? 表現? が少し変わった? 成長と言うよりは心境の変化があったのかな?」


 今は色々迷ったり試したりしている感じかな? と優しく微笑んだ。


 なんでもわかっちゃうんだな。


 思った通りとはいえ、実際に身体の成長があまりなかったことは地味にショックだったが、それ以上に精神面での成長が無い、どころか下手したら衰退している。


 そんなところも、実里は測れてしまうのではないかと思った。



『ソルエス』はわたしに優しくしてくれる。甘やかしてくれる。

 バテリアやバンドの人たちなんて甘々だ。

 ママは厳しいけど他の四天王は優しい。

 子どもの頃からの環境だ。だから甘えるのにはなんの躊躇いもない。

 ジアンはいつも本当の妹のように接してくれた。相談に乗ってくれたことも数えきれないほどある。


 けれど、今は『ソルエス』のみんなに弱音を吐きたくなかった。


 ハイーニャはバテリアの女王だ。

 わたしは今、自らにその資格を問い、資質を身につけるべく奮闘(迷走?)しているところだ。バテリアに情けない姿は見せたくない。

 四天王はママと世代が近いからか、子どものように可愛がってくれている。でも、ハイーニャを目指すなら同じフィールドに立つライバルでもある。いつまでも子ども扱いされている場合ではない。

 ポルタのジアンはハイーニャのライバルにはならない。

 ずっと慕ってきた。ずっと可愛がってくれた。本当の姉のように思っている。甘えたい気持ちはとてもある。

 だけど、ハイーニャを獲ると決めたのはわたしだ。その意識を、覚悟を、成長をジアンに見てほしいと思っていた。格好の良いわたしを見て欲しかった。


 周りが盛り立ててくれるハイーニャ像もあるだろう。でもわたしは、周囲を鼓舞し引き揚げるハイーニャになりたいのだ。

 その決意が空回りし、意固地になった結果の迷走ではある。


 だから、『ソルエス』の、わたしに優しい人たち以外で、悩みを打ち明け、相談できる信頼のおける相手が欲しいと思っていた。


 だから、全てを見透かしているような実里の問いに、優しい笑みに、委ねたいと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ