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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十四歳 コミュニケーション迷子
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ささやかなチャレンジ

『浅草サンバカーニバル』が終わると、『ソルエス』は休む間もなく『サンスターまつり』の準備に入る。


 ただ、このまつりは商店街の衰退に比例するように、最近は規模を縮小してきていた。『ソルエス』も同様で、ジアンのパートナーだったメストリを含め、少しずつメンバーを減らしてきている。



『サンスターまつり』は発起当初から、昼の部のパレードと夜の部のステージの二部構成で行われるイベントだった。


 他のイベントと比べると、演者の準備や本番に掛かるエネルギーは高くはあるが、近年はかつてほどの創り込みは行われなくなっていた。


 その辺も新プレヂデンチのハルは改善していく想定はあるようだが、今年に関しては言い方は悪いが、これまでにチームが得てきた経験を活かしてローコストでこなすような形でまとめるのだろう。



 ローコストと言っても、構成や振付などを使い回すだけで、パフォーマンスの手を抜くわけではない。


 メンバーは基本的にはイベントに参加したいと思うものだから、参加率も悪くない。

 商店街自体の集客力が落ちているため観客も減少傾向だが、特色のないベッドタウンの地域住民向けのお祭りとしては、サンバを目当てに毎年地域外からも観に来てくれる観客もいる。


 演者、観客共に本気で演じ、楽しむパレードとステージであることに変わりはなかった。

 だから、参加メンバーは練習には真面目に出ているし、準備も真剣だ。



 控室では、パシスタはメイクに勤しんでいた。

 パフォーマンス用のメイクは普段のメイクとは異なる。より表情がくっきりと映えるように、より本場のブラジルダンサーのようにはっきりとした目鼻立ちになるように、丹念に二時間は掛けて作り上げていくのだ。



 U15組も今回は全員参加だ。

 席が決められているわけではないが、なんとなく同じ塊でそれぞれメイクをしていた。

 年少組は大人のパシスタがやってあげているが、年長組はまずは自分でメイクして、大人のパシスタにチェックしてもらうのだ。


 少し間を空けて隣に座っていたひいは一通りメイクを終えたのか、スマートフォンをいじっていた。



「ひい、まつ毛のエクステずれてるよ?」


「え、ほんと?」


「うん、ちょっと動かないで。直してあげる……これでどうかな?」

 ひいが手鏡で出来を見る。


「大丈夫ぽいね。ありがと」



 ……良かったんじゃない?

 自然だったんじゃない?


 仲間のための気遣いとフォローをし、お礼を言われる。そこに剣呑な雰囲気など微塵もない。



 でもでも、ちょっと待って。

 ずれてるよって言い方、指摘っぽかった? 

 否定しているような感じになってはいなかった?


 直してあげる、って、偉そうじゃない?

 直させての方が良かった? いや、直させてもおかしくない?


 ひいのお礼、素気なくなかった?

 もしかして鬱陶しいとか思われてない?

 余計なお世話とか?

 恥かかせやがってとか思ってない? 恥ってなによ? ドラマのチンピラじゃないんだから。俺の顔に泥塗りやがって的な? 塗ってるのはファンデじゃん!



 あぁ、どうしようどうしよう。


 パニクってきた。よくわからんようになってきた。


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