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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十四歳 コミュニケーション迷子
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きっかけ

 わたしはどんな顔をしていたのだろうか。地獄でも見てきたような顔だったのだろうか。


「ちょっと⁉︎︎ ほんとにどうしたの?」


 亜里沙の声にはいよいよ緊急性の高さを示すような焦りが見え始めた。



「わたしの何が良いの⁉︎︎ 教えて!」


 迷走し、落ち込んだわたしは、本気で心配してくれていそうな亜里沙に、恋人に依存するタイプが相手に縋っているかのように訊いていた。


 今の亜里沙の言葉ならなんでも受け入れてしまいそうなわたしは、もし亜里沙が宗教の勧誘の人だったら、簡単に信者になってしまっただろう。



「まず、何があったか教えて?」



 亜里沙の中で、わたしは緊急性の高い状況ではなく、混乱を来しているであろうとの分析がなされたのだとしたら、的確な分析だ。


 落ち着かせるように問う亜里沙に、わたしはゆっくり、人間関係の作り方、コミュニケーションの図り方と言う、社会での営みにおける基礎中の基礎についての悩みを吐露していた。


 トイレに行っていた愛菜が戻ってきて、「なになに? どうしたの?」と、不思議そうにわたしと亜里沙の顔を交互に見ていた。



「理由なんてないよ」



 亜里沙はコミュニケーションの図り方だとか、友達の作り方などについて答える代わりに、わたしの最初の質問に答えた。


 友達なんていつか勝手になっているもので、理由があってなるものではない。強いて言うなら性格が合った? 程度ではないかと言う。



 それはその通りなのだと思う。


 では、長年一緒にいても友達になれない場合は、気の合わない相手だから、友達にはなれないと言うことだろうか?



「そう言うことでもないと思うけど。仲良くなりたいなって思うことはあるし、そんな時は話しかけたりするから、勝手になるって場合だけでもないよね」



 そう、だから話しかけようとしたのだが、うまくいかなかったのだ。



「わたしたちってどうやって仲良くなったの?」



 結局、また心の弱い依存気質の恋人のような質問をする面倒くさい存在になっていた。



「そんなの覚えてないよ。愛菜覚えてる?」



 亜里沙は少し呆れながらも、真剣に考えてくれている。これは、やはり、掛け値無しに友達だろう。


 わたしにもこのような友達を作る事はできていたのだ。かつては。



「んー、ふたりは小学校の頃も一緒の時があったんでしょ?

班が一緒で給食がどうのみたいな話は聞いたことがあるけど、その場にいなかったんだからきっかけはわかんないよ。

わたしと良く遊ぶようになったのは、ふたりが帰るときに、たまたま一緒になって、方向も同じだったから話しながら帰ったのがきっかけじゃない?」




 思い出した。


 当時の給食は、担任の方針で完食しないと遊びに行けないシステムを採用していた。


 なんで大勢の生徒が食べる給食にわざわざ主力野菜とは思えないゴーヤを使う必要があったのかわからないが、わたしはその苦い野菜がどうしても食べられなくて、箸も止まってしまっていた。


 このまま休み時間を終えても食べ終わらなければ、流石に撤去させてもらえるだろうかと思いながら、持久戦もやむなしと覚悟を決めた時、同じ班だった亜里沙がさっと残ったゴーヤを食べてくれたのだ。

 そのさりげなさたるや、少女マンガのヒロインの相手役かと思うほどだ。もしかしたらわたしの瞳にも星だかハートだかが浮かんでいたかもしれない。



 同じ班だから話すことくらいはあったが、これを機によく話すようになり、一緒に帰るようにもなったのだ。


 亜里沙がわたしと仲良くなる目的でとった行動ではないと思うが、能動的な行動によって生じた縁という意味では、積極的に話しかけて友達になるパターンに近いと言える。


 愛菜とのことも覚えている。


 たまたま帰るタイミングが同じだった。たまたま同じ方向だった。そんなただの偶然と言えるきっかけで仲良くなった。


 そして今は、これもたまたま受験への取り組み方が似ていると言う理由で、相変わらずよく遊んでいる。


 これは亜里沙の言う理由なんてないし必要でもないと言う論を裏付けてはいないか。



 身近なふたりで、すでに二種類の友達作りのパターンは経験していた。


 以前はできていて、今できない理由はどこにあるのだろうか。



「わたしって性格悪い?」



「そんなことはないんじゃないかなぁ」



 ふたりとも基本的には忌憚のないタイプだ。


 多少はお友達価格で価値は上乗せされていても、少なくとも誰の目から見ても明らかな性悪というわけではなさそうだ。


 それはそうだろう。それはそうだろう!


 かつて天使のようだと持て囃され、名指しの喝采を恣にしていたわたしが!


 根性が悪いなんてあるはずがない。


 多少扱いにくい部分はあるのかもしれないが。思春期の子どもなどだいたいそんなものだろう。



よし、少し元気が出てきた。



「わたし話しかけやすい?」



「んー、まあ、とっつきやすいタイプではないかも」



 わ、わかってた。そんな気はしてた。だから想定内。これくらいではへこまない。



「でも、話すと面白いよね!」



「そーそー!」愛菜が口を挟み、亜里沙が乗っかった。



 ? コワモテの人が話してみたら意外と優しくて話しやすかったとか、そう言う話? わからなくもない、か?


 でもそれなら表現がおかしいな。「面白い」ではないだろう。「愛嬌がある」と言いたかったのか? まあふたりとも独特な部分があるからな。



 とにかく、わたしが誰かとコミュニケーションを取る上で、わたし自身の気質が取り除け得ない障害となっているのではないとわかっただけでも充分だ。


 まさに、持つべきものは友だなと思い、ふたりには感謝の気持ちを持った。今度スタバの新商品奢ろう。


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