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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十四歳 コミュニケーション迷子
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反省ノート

 今回の反省点は、といつもの振り返りノートを開く。


 このノートは主にイベント出演後に、演技中に思ったこと、イベント後にあげられた動画を見て気づいたこと、ママをはじめとした指摘や評価、感想などから反省点をまとめ、記載していた。


 パレードは概ね問題なし。少し観客へのアピールが弱かったかも。

 ステージは、初っ端が少しバタついた。

 ノペの左右のバランスが崩れている箇所があった。

 微妙だが少しリズムが取れていない瞬間があった。


 全体的には良い出来だと思えるが、細かく見れば改善点は見つけられる。

 次は音をよく聴くことと、左右のバランスの意識をテーマにしよう。


 ……これでノートを閉じてしまったら、今までと変わらない。今回気づいた課題と向き合わなくては。

 課題を簡単な言葉で表すなら、コミュニケーションだ。

 決して嫌われているわけではない、はずだ。

 わたしも誰も嫌いではない。


 長年をかけ、少しずつ築いた、築いてしまった、お互いあまり干渉しない関係性。特に年長組には顕著だ。


 たまたま同じチームのメンバーになっただけのこと。

 別に友達じゃないし。パフォーマンスをしっかりこなせばそれで良くない?


 などと、斜に構えた意識はないか? わたしにはある。あった。


 わたしが一番上手いと言うプライド。

 けど歴が浅いにも関わらずすぐにその実力を示し肉薄する位置にいる同い年の後輩に対しての焦り。

 わたしはサンバのみに特化しているが、ふたりは部活など他に夢中になれるものがあることへの思いは、わたしがトップの実力でなくてはならないと気持ちを硬くさせた。


 これはプライドだろうか? それとも嫉妬?


 思春期を言い訳にしても仕方ないが、とてもかつて天使のようだと言われていた者とは思えない心の裡であることを認める。


 ふたりもわたしに対して、負の感情を抱くほどではないが、積極的に仲良くしたいとも思えない気持ちを抱えていたのではないか。

 お互いが、それを少しずつ年月をかけて積み重ねてきていたのではないだろうか。


 これまでも、嫉妬を内包した揶揄の言葉が聞こえてきたことはあった。

 そんなのは意識の低さの表れだと、聴くに値しない言葉として捨て置いた。

 実際そういう言葉を発する者たちは既に辞めていて、やっぱりその程度かなどと思っていた。


 本当に? 本当にわたしそんなに強かった?


 いや、多分傷ついたはずだ。悔しかったはずだ。


 だから、より意固地になって、技術を磨き続けたのだ。そんな奴らを黙らせるために。



 それは、殻を纏う行為だったのだろうか? 少なくともとっつきやすい印象ではなかっただろう。


 年長組のふたりはわたしと同じ年齢だ。

 ふたりとも見た目はわたしよりもずっと大人びている。運動神経が良くセンスも良く、すぐに実力を発揮していた。


 ふたりとも小学生の頃から際立った美人で、成長するに従い容姿の良さには拍車がかかっていた。自信にも満ち溢れているようにも見えた。


 それでも、所詮わたしと同じ年齢だ。

 より長じてから『ソルエス』に入ったみことでさえ、入会当時は小学生だ。心細くないわけがない。


 同じ年齢の先輩が、話しかけにくかったらどんな気持ちだっただろうか?


 わたしが入った時は何もわからない幼児だ。

 周りの大人は全員チヤホヤしてくれた。

 それは成長しても変わらず、そしていつでも可愛がってくれたジアンがいた。


 その人たちがしてくれたことを、わたしは同い年の後輩たちに、更には年少の後輩たちにも、とてもできていたとは思えなかった。


 完全に、自らが撒いてきた種である。


 あー、わかった、充分わかった!

 で、だからと言って、今からわたしにどうしろと?

 にこにこ笑いながら先輩ヅラして不安はないかと訊く?

 すでに実力者のふたりには反発される未来しか視えない。

 媚を売るようにおもねって、雑談でも振ってみる?

 急にどうしたと怪訝な顔をされるに決まっている。

 そして後で、「なにあれ? キモくない? 怖くない?」などと言われるのだ。


 なにより、急なキャラチェンジにはとてつもないエネルギーが必要に思え、とても簡単にできるとは考えられなかった。

 だからと言って、このままで良いわけもないのだが。



 その日の夜、電話があった。


 ジアンからだった。特に用はないと言う。ジアンからは何も訊いて来なかった。



 わたしはジアンには心配させないと誓ったから。

 だから悩みや弱音は言わなかった。


 泣いているのをばれないようにした。気付かれていないはず。



 だけど、お互い無言の電話をジアンはずっと切らないでいてくれた。

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