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千紫万紅のパシスタ 累なる色編  作者: さくらのはなびら
十四歳 コミュニケーション迷子
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イベント終わり控え室にて


 終わった。


 結果だけを見れば良いパフォーマンスだったと思う。個々の演技が優れているから。

 揃えるべきところも揃っていた。これも個々の技術力の高さでお互いが揃えに行ったから揃ったのだ。

 連携の賜物、チームワークの成果ではない。


 そして、終わった後もわたしたちは一言も口を聞いていない。正確にはわたしは、だ。


 控室は公共施設の中の会議室があてがわれていた。

 着替えも行われるため男女別々だ。

 机や椅子は指定ではないので、思い思いで場所を取って作業をしている。


 クリアンサス三人はなんだかんだで雑談くらいはしている。テレビのことや学校のことなど。パフォーマンスを終えて緊張感から解放され、リラックスした様子だ。


 みことはクリアンサスのゆうと仲が良く、話題に混ざっている。


 ひいは、パシスタのほづみ(入船穂積(いりふねほづみ))の妹だ。


 ほづみの色はナイル・ブルー。社交的で面倒見が良い優しい人。

 十代メンバーでは唯一ハイティーンの彼女は、大人パシスタに混ざって演技をしていた。


 ひいは終わったら早々に姉の元に行っておしゃべりをしている。


 もちろんわたしがぼっちなわけではない!

 わたしにも終わって早々ジルやヒトミが話しかけにきてくれた。

 ママは敢えてなのか、イベント前後はあまり話しかけてはこない。家に帰ったら多少厳しめだけど公正な評価を与えてくれる。


「ルイ、良かったよ!」


 そして、もうひとり。


 憧れていた、姉のように慕っていた先輩、ジアン(弧峰慈杏(こみねじあん))が観客として観に来てくれていたのだ。

 イベントが終わるのを見計らって手土産を持って控室に挨拶に来てくれた。


 ヒトミに差し入れを渡した後、わたしに話しかけに来てくれたのだ。


 ジアンの色はシアンブルー。

 品格があり粘り強く困難に立ち向かう。

 ジアンにぴったり。わたしの瑠璃色とは近似色だ。相性は良いに決まっている!


「ジアン! 今日空いてたの? だったら出れば良かったのに!」


「相方辞めちゃったしねぇ」


 困ったように笑っている。


 ジアンは『ソルエス』では『ポルタ・バンデイラ』と言うダンサーだ。

 チームの象徴である『バンデイラ』(旗)を持つ女性で、エスコート役の『メストリ・サラ』と言う男性ダンサーとペアで踊る。このペアを『カザウ』や『ポルメス』と呼ぶ。

 象徴を預かるのだから重要なポジションだ。


 ジアンもわたしやハルと同じく、『ソルエス』立ち上げメンバーの子(わたしは孫だけど)で、幼少の頃から参加している生粋かつ生え抜きのメンバーだ。

 パシスタとしてのレベルは高く、わたしはママの次のハイーニャはジアンがなれば良いなと思っていた。


 現ハイーニャのビオラも素敵なパシスタで、ハイーニャの資質もあり何の不満もないが、なんとなく生え抜きで継いでいきたいと思っていたのだ。


 だけどジアンはポルタになってしまった。

 こちらも重要なポジションだから実力が求められる。それは仕方ない。誰かがやる必要のある、誰でもなれるわけではないポジションなら、やっぱりジアンは相応しいと思うし。

 でも、カザウとして出られないなら、パシスタに戻って出れば良いのになとは思う。その実力は充分にあるのだから。


 ポルタはパシスタのようにノペは踏まない。だから練習内容もパシスタとは異なる。

 ジアンはそれを気にしているのかもしれない。

 けど、長年培ったノペを忘れるとは思えない。

 中途半端な立ち位置になることへの遠慮があるのかもしれない。

 でも、実力のあるダンサーなら出てくれた方がクライアントも観客も喜ぶから気にしなくて良いと思うのだけどな。


「うん、ルイの言う通りだと思う。わたしだって出たいしね。

でも最近練習も出られてないから。そんな状態じゃやっぱり主催者や見てくれる人に失礼でしょ。それに、他のパシスタにもね」


 わたしの疑問に、希望に、返された答えには納得するしかなかった。

 けど、一番気にしているのは他のパシスタへの配慮の部分のような気がした。


 それじゃ、邪魔になるといけないから、とジアンはハルに挨拶をして帰って行った。

 やっぱり遠慮しているのかなと思った。ジアンが少し遠くなってしまったようで寂しかった。


 片付けや着替えがひと段落した。


 締めの言葉がハルからあった。今日のイベントのクライアントからの評価だ。非常に良かったらしい。観客の反応も上々だったそうだ。


 それを聴くわたしの周りには、誰も居なかった。


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