苦節5年。復讐すべき相手を見つけ出した果てに、僕は――。
なろうラジオ大賞用小説第八弾!
令嬢特捜シリーズの一つの事実を千文字で書き切れるかの実験作でもあります(ぇ
「まさか、こんな良い買い物をするとは思わなかったわ」
それが、今の僕に向けてかけられた……初めての言葉。
こうして自我が……そして次に破壊衝動が起こり、それが治まってから、最初に聞いた言葉だった。
「というか、これ俺達みたいじゃん?」
それが、次に聞いた言葉。
意味が分からない言葉だった。けど相手を視認し。近くにあった鏡で自分の姿を視認し。次に自我を持つ前の自分にかけられた言葉を思い出し。ある程度察した。
『今の状態じゃ、元に戻せないぞ』
『……もし正常に戻せなかったら、どうするつもり?』
『……処分も、考えるしかない』
恐怖どころか。
憎しみも覚える言葉。
僕はおそらく、何かの実験で創られた存在で。
だけど僕に問題があり。
場合によっては処分しようとした、と分かる言葉だ。
だからこそ僕は、ヒトとしての形をとった瞬間。
心の奥底から湧き上がる破壊衝動に任せ、周囲をメチャクチャにして……そしてその事を、後悔していない。
だけど心残りはあった。
僕の処分を検討してた二人を殺せなかった事だ。
あの時、どうやら二人は……研究所と思われる場所にいなかったらしい。
「そうだわ。あなた、私達の所に来なさいな」
「おい、いいのか勝手に連れ帰って」
「いいでしょ、この子も見捨てられた存在みたいだし?」
けど、僕は諦めない。
僕という存在を創り出しておきながら。
その僕の存在を無かった事にしようとした二人は……絶対見つけ出す。
どういうワケか。
僕を仲間に入れようとする連中を利用してでも。
創造主だからってなんだ。
それだけで被造物を好きにしていい理由になんかなるもんか。
※
それから、五年。
その二人を見つけた……けど、二人は墓の下だった。
僕は怒り狂った。
墓そのものを破壊しかけるくらい。
でもまだ、僕という存在を知らしめるワケにはいかない。
二人とは別に。
僕を孕んだ女が。
そして全てを知らず生きてる半身がいる。
※
だからこそ、僕は我慢し。
さらに時間を掛け、次の標的――僕を孕んだ女を見つけ出し、その女を殺すために女のもとへ行った。
途中で、僕や僕が利用してる連中の邪魔をする集団に邪魔されたけど。
だけど、ついに女のもとに来て――。
「……■■■■?」
――女に、僕の半身の名を呼ばれた。
瓜二つだからしょうがない。
でも、その女は心が壊れてて……僕を認識できないハズ。
なのに、両腕を広げ……女はそう言って。
僕の中の、殺意が薄れて。
そんな時、僕の半身とその女は追い付いた。