アヒルと鴨のコインロッカーとお前と俺
天気が良い。下校中のランドセルがカタカタと音を立てて通り過ぎるのを横目に、池を眺めている。もう春を思わせる陽光は、水面をキラキラと反射させていて、少し眩しい。「のどか」を漢字にすると「長閑」になるあたり、日本語が好きだなあと思う。そんな閑を破るように、池がピチャンと音を立てたので見てみると、カモがゆっくりと泳いでいる。そういえば、大学生のとき、「アヒルと鴨のコインロッカー」という映画と「南瓜とマヨネーズ」という映画を同じ人から勧められて観たせいで、未だに内容がこんがらがる。カモを見つける度にそのことを思い出し、頭がこんがらがる。
くしゃくしゃになった頭をすっきりさせようと煙草を吸っていると、コロナウイルスの簡易検査を終えた彼女が戻ってきた。長閑なバードウオッチングは、病院の付き添いの暇つぶしだったわけである。こんなヘンテコなデートもたまには良い。元気な彼女もかわいいし、すこし弱っている彼女もかわいい。まったくその可愛さに、僕は頭がこんがらがる。