ジークVSキャラメル 1
魔人ジークは黒髭に覆われた口元から白い歯をのぞかせて笑っていた。
相手は小娘がひとり。
自分が負ける要素はあるはずがないと高を括っているのだ。
指の骨を鳴らし、革靴を履いた足でゆっくりと歩を進めていく。
距離が縮まるたびにキャラメルの心臓の鼓動は強くなり、頬には汗が流れる。
敵を睨みつけてはいるものの、対峙しているだけで喉が渇くほどの圧迫感。
初めての戦闘。
杖を突きつけるが、相手に動揺の色はない。
キャラメルは意を決して杖から無数の金平糖を放出。
まるでまきびしのように大量にバラまかれた金平糖の一粒がジークの目に着弾。
「ぎゃおおおおおおっ!」
獣のような咆哮を上げて悶絶する隙を突いて、懐に入り込むと、膝小僧を前蹴りで蹴ってから、更に渾身の力を込めて股間に蹴りを見舞う。
男の最大の急所のノーガードで食らってしまい、魔人ジークは絶叫し、両膝から崩れ落ちる。
その様子にキャラメルは慎ましい胸を反らして得意げに言った。
「あなたなんて私にかかればこんなものよ」
しかし、キャラメルは気づいていなかった。
下を向いていたジークの顔が、怒りによってまるで赤鬼のように真っ赤になっていることを。




