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祖父との夕食

キャラメルは迷っていた。祖父が帰宅するまで待つか。それとも自分だけが先に食べるか。


このまま待ち続けていたらせっかくの料理が冷えて台無しになってしまうだろう。


しかし、ひとりで食べるのは味気ないし、やはり大好きな祖父と一緒に食べたい気持ちも捨て去ることができなかった。


「ああ、もう!お願いだから早く帰ってきてよっ!」


涙目で時計を睨むと、ガチャリと玄関の扉が開く音が聞こえた。祖父が帰ってきたのだ。


キャラメルの祖父、ミスタープティングは青のモーニングコートを着込んだ紳士だ。


黒いステッキとサンタクロースのように長く伸ばした白髭、澄んだ青い瞳からは優しそうな印象を与える。


彼の容姿で最も目立つ部分は帽子である。


黄色く美味しそうなプリンを模した帽子を常にかぶっているところから、偉大な業績も含めてミスタープティングと彼は呼ばれている。


「キャラメルや。今、帰ったよ」

「遅すぎるわよ。せっかくのごはんの味が台無しになっちゃう!出かけるときはもう少し早く帰ってきてよね!」


腰に手を当てプンプンと怒りだすキャラメルは、先刻まで安楽椅子で寝ていて自分が怒られる側になるかもしれなかった事実をきれいに忘れていた。


プティング老人は顎髭を撫でて穏やかに笑ってから、音を立てずに椅子に腰かけた。


「いただきます」

「いただきます!」


食材に感謝をして料理を食べる。


にんにくのスライスがたっぷりとのせられたステーキをナイフで切って、フォークで刺して一口食べてみる。


よく噛んでから再び口に運ぶ。祖父が食べる様子を眺めながら、キャラメルは心配そうな顔でたずねた。


「おじいちゃん、どう?口に合わない?」

「そんなことはない。ちと、肉が固いがね」

「ハンバーグも食べてみて!」

「どれ……」


孫の勧めに乗ってハンバーグを口に含むと肉汁が溢れだし、舌を満たす。


それからサラダ、ジャムを塗ったパン、食後のデザートとしてのアップルパイを食べ終わり、プティングは白い口髭をナプキンで拭った。


「ご馳走様。美味しかったよ」

「おじいちゃんが喜んでくれて良かったぁ!」

「じゃが、年寄りにはちとカロリーが高すぎる……」

「何か言った?」

「なんでもないよ。わしは疲れたから眠ることにするよ。君も夜更かしせずに早く眠るんだよ。睡眠不足は美容の天敵というからね」

「おやすみなさい、おじいちゃん」


後ろ手を組んで悠然と寝室に向けて歩き出した祖父は、不意に振り返って言った。


「今度は君のために面白い本を買ってこよう。

魔術の辞典では退屈で寝てしまって、キャラメルまで食べたくらいだからねえ」

「おじいちゃん、知ってたの!?」


孫の問いに祖父はにやりと笑って。


「わしの千里眼に見抜けぬものはないよ。それから、明日は気を付けるんだよ」

「どうして?」

「明日になればわかるよ」


行動の全てが筒抜けだった事実にキャラメルは驚いたが、それ以上に祖父の言葉が気になった。


明日はいったい何が起きるのだろうか?


小首を傾げて考えるが、さっぱり理解できなかったので、彼女は考えないことにして寝る用意をして寝室へ向かった。

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