オーク、ブーヒャ登場!
「ジークがやられただと!? そりゃあ痛快だぜ。ブヒャヒャヒャヒャ!」
ジークがプティングに敗北した情報はすぐに魔法格闘家の中で共有された。
この報せに誰よりも腹を抱えて笑ったのは、黒いオークのブーヒャである。
普通のオークはイノシシの頭だが彼は黒豚の頭をしていた。ゆえに牙はない。
黒光りする肥満体の彼はジーク戦死の一報を肴に葉巻と酒を満喫していた。
ジークとブーヒャは極悪人として悪名を轟かせていたが、どちらも似たようなタイプのため、互いに張り合い、犬猿の仲であった。
やつさえいなければ自分が悪としてより輝ける。
そのような中で、ジークが実力差も考えずにプティングに挑み、犬死をした。邪魔者が消えたことはブーヒャにとって好都合だったが、彼にとっては思わぬおまけまで付いてきた。
プティングには孫娘がおり、そこそこ強いという情報を手に入れたのだ。
ブーヒャは無類の女好きであり、女格闘家を叩き潰すことに快感を覚えていた。魔法格闘家新聞に掲載されたキャラメルの写真を見た豚の化け物は醜悪な笑顔を見せ、舌舐めずりをする。
「今度は俺が挑戦してやるぜぇ。
ただし、プティングじゃねぇ。
お嬢ちゃんの方に、だ」
その時、偶然にも村人が洞窟の様子を覗き見てしまった。
気配を察したブーヒャは睨みを利かせ、愛用の三叉槍を手に取る。
凶器を持った豚の化け物を前に村の男性は震えるばかりで声も出ない。
「てめぇ俺を見がったな?」
「い、命ばかりはお助けを……」
「俺の突きを食らいやがれーッ」
オークは容赦なく三叉槍を突き出し、男を串刺しにした。
岩壁に潰され槍に突かれて絶命した男の返り血を浴びたブーヒャは満足げに笑い。
「今度はあのお嬢ちゃんに俺の槍をタップリと味合わせて、地獄へ落としてやるぜ」