最強の味方
槍が迫ってくる。キャラメルは自分の人生が終わると確信し、目を瞑った。
けれどいつまで待てども槍が貫通する激痛は訪れない。何かがおかしい。
恐る恐る目を開けて見ると異変の正体がわかった。
彼女の目の前にひとりの人物が立ちはだかり、槍を受け止めていたのである。
流れるような銀髪にプリンを模した帽子、空のように青いモーニングコート。
彼女が誰よりも尊敬する祖父が孫の危機に現れたのだ。
「おじいちゃん!」
「わしが来たからにはもう大丈夫だよ。ひとりでよく頑張ったね」
背中で祖父は語ると、握っていた炎の槍を瞬時に塵に変えてしまう。
澄んだ青い瞳は穏やかで、長い口髭は風に滑らかに揺れている。
闘氣も覇氣もジークは感じ取ることができなかったが、宙に浮かんでいた老人が地に降りた瞬間、透明な得体の知れぬ氣が全身に当たり、激しい戦慄を覚えた。
老人は柔和な笑みを浮かべながら、後ろに腕を組んだ姿勢で近づいてくる。
どこまでも穏やかながら隙を突くことができない。
「君かね。わしの孫と戦ってくれたのは」
「あと少しで止めを刺すところだったが、楽しみを奪ったか。だが良い。こうしてあんたと戦う機会を得たのだから。伝説の魔法格闘家、プティングさんよぉ」
「戦う前の礼儀として、君の名を教えてくれないかね」
「いいともよ。俺の名はジークだ」
「では、ジーク君とやら遠慮なくかかってきたまえ」
特にこれといった構えも見せず泰然とした様子のプティングに、ジークは牙を覗かせて笑うと、目を妖しく光らせた。
「それじゃあお言葉に甘えて全力でいかせてもらうぜぇ!」