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第182話vsミトラ神 ファイナル・バトル(3)

「わわっ!? やっぱりものすごい威力ですよ!? まるで嵐を部屋の中に閉じ込めたみたいです!」

 その余りの激しさに、さしものアイセルも恐れおののいていた。


「そもそもこれは屋内で使うような技じゃないからな。本来は開けた場所で広範囲にぶっ放す技だから」


 一番の年長者としてパーティが動揺しないように冷静を装って言いながらも、想像していたよりもはるかに激しく神殿内で荒れ狂う極光殲滅魔法を前に、俺は内心で冷や汗をかいていた。

 

「狭い室内で行き場を失った攻撃が、神殿遺跡内を覆う魔法防御障壁に次々と乱反射して乱れ舞ってます!」


「アイセル、ここからの指示は任せる」

 最前線で戦う時と同様に臨機応変な対応が必要と判断し、俺はアイセルに全権を委譲する。


「了解です! 作戦の第2段階に移行します! ケースケ様、シャーリーさん! 2人はすみっこに身を寄せて体勢を低くしてください!」


「分かった」

「オッケー!」


 作戦は第2フェイズへと移行する。

 作戦と言うか、ぶっちゃけると極光殲滅魔法の余波からなんとか全員で生き残ることなんだけど。


「サクラは前へ出て2人を守る壁になって! 一番苦しいポジションですがなんとか堪えて下さい!」

 アイセルがテキパキと指示を出し、


「全然だし! これくらいちょお余裕だし! 任せろぉ!」

 サクラが気炎をあげる。


「脇を抜けてくるのと上から跳ね返って来るのはわたしが全部打ち落とすので、細かいことは気にしないで大丈夫だからね!」


「うん、そっちは全部アイセルさんに任せるね! じゃあ行くよ~! ぬオォぉぉっっ! うおりゃぁぁっっ! 怒りの精霊『フラストレ』よ! 我に力を! 精霊力全解放! フルパワー、スーパーモード!」


 神殿の入り口に近い四つ角に退避していた俺たちの中でサクラ一歩前に出ると、横にしたガングニルアックスを盾のように構えて全力での防御体勢をとった。

 同時に、サクラの身体の至るところから深紅のオーラが立ち上りはじめる。


 全力解放された怒りの精霊『フラストレ』の力が、抑え込もうとするサクラの意に反して漏れ出で始めているのだ。


「ぬぐぐぐぐぐぐぐぐっ!!」

 暴走しそうになる怒りの精霊『フラストレ』を、必死に抑え込むサクラ。


「S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』発動……、ぐうっ!」


 俺はスキルの使い過ぎて痛む頭に鞭打って、『狂乱』スキルが暴走しないようにバフスキルをスピード全振りから精神異常耐性へと強化し直して再発動した。


 くぅっ、高熱を出した時みたいに頭がガンガンする……!


「ちょっとケースケ、大丈夫? 顔が青いわよ?」

 俺の隣で身を寄せ合うようにして身体をかがめて小さくなっていたシャーリーが、俺の顔を覗き込みながら心配そうに言ってくる。


「……正直、大丈夫とは程遠いけど、つい最近同じ目にあったおかげで、この程度じゃ死なないのは分かっているからな。そういう意味では大丈夫だ」


「死なないから大丈夫って、そんなにしんどそうなのに」

「神様に勝とうとしているんだぞ? 俺も死ぬ気で根性見せないとな」


 心配するシャーリーを軽く制すると、俺はサクラの様子を観察する。


 状態異常を軽減するバフはかけた。

 だがそれでも、精霊力の全解放による反動はすさまじいものがあるのだろう。

 サクラの身体は時おり、ビクンビクンと痙攣したように震えている。


 しかしそれでもサクラは、

「ぐぬぬぬぬぬ……! ふんがーー!! 私、最っ強ぅ!!」


 最後の最後で怒りの精霊『フラストレ』を制御しきり、暴走することを許さなかった。

 ギリギリのところで、『狂乱』スキルを完璧にコントロールしてみせたのだ。


 そしてスーパーモードとなったサクラは、次々と跳ね返っては乱軌道で襲い来る極光殲滅魔法を、パーティの盾となって全力で耐え続けた。


 まるで温泉の湯けむりのように、サクラの小さな身体からは白い湯気が止まることなく立ち上っていく。

 ガングニルアックスで守っている部分以外は、サクラが直撃でダメージを受けているからだ。


 まさに盾役(タンク)


 ダメージを受けたそばから超回復できるバーサーカーしか成し得ない、完全捨て身の防御戦法だ。



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