表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/213

第176話 vsミトラ神(4)

 サクラの『武器投擲(とうてき)』スキルは、音速を越える。

 それとそっくりそのまま同じ性能を持つ冒険の神ミトラの『武器投擲(とうてき)』を、バッファーの俺の運動能力ではもう何をどうしたって避けきれなかった。


 だめだ、死ぬ。

 俺としたことが、考えに没頭し過ぎて完全に油断した。


 ならもうせめて、シャーリーだけでも助けないと!


 俺は腕を引っ張るシャーリーを、反対の手でドンと突き飛ばした。

 2人とも巻き込まれるより、俺1人がやられる方がマシだと瞬間的に判断したからだ。


「ケースケ――」

 俺に突き飛ばされたシャーリーが目を見開く。


 大丈夫、一応勝算はあるんだ。

 俺の装備はパーティ一強固なSランク防具『星の聖衣』だ。

 当たり所が良ければ、なんとか生き残れる可能性もあるはずだ――!


「神様……!」


 俺は少しでもダメージを減らそうと身体を小さく丸めて被弾面先を減らし、奥歯をぎゅっと噛みしめながら、両腕で頭を抱えて守って来たるべき衝撃に備えた。


 しかし攻撃が俺の身体に届くことはなかった。


 ズドーーーーン!!

 代わりに鼓膜をつんざくようなものすごい衝撃音が古代神殿内に響き渡る。


「ぐぬぬ……っ! すっごい威力だし……! 腕がちぎれそう……! でも、うがーーーーーーーっ! 舐めんなぁ!!」

 俺の前にはガングニルアックスを盾のように構えたサクラが、仁王立ちしていた。


「サクラ、お前……」

「まったくもう。ケイスケは回避はカメだし、防御もチリ紙なんだから、よそ見とかしないでよね! 死ぬでしょ馬鹿!」


「わ、悪い」


 見るとバトルアックスの射線上の床に、途中から何かを擦ったような2本の跡が一直線にサクラの足元まで続いていた。

 つまりサクラが途中で強引に射線に割り込んで、バトルアックスの投擲を受け止めてくれたのだ。


 2本の線の跡は、サクラが必死に足を踏ん張って防御してくれた証だった。


「少し離れてずっとチャンスを窺ってたのが幸いしたかなー。もしアイセルさんと一緒に接近戦をしてたら、今のは絶対割り込めなかったし」


 そう言ったサクラの右腕は――受け止めた衝撃のものすごさを語るように――だらりと力なく垂れ下がっている。


「おまえ腕が……」

 想像を絶する威力だったのだろう。

 バーサーク状態で痛みをあまり感じないはずのサクラの顔は、激しく苦痛に歪んでいる。


「ふーんだ! 別にこれくらい平気だし! ちょっと神経がズタズタになって、骨がぐちゃぐちゃに粉砕骨折してて、筋肉がブチブチの細切れになってるだけだもん」


「超重傷じゃねぇか。さしものバーサーカーの再生能力でも、それだけの傷はすぐには回復しきれないぞ」


「だから舐めんな、ってね! はぁぁ……っ! 怒りの精霊『フラストレ』の力を回復に全集中!」


 威勢よく叫んだかと思うと、すぐにサクラの右腕から白い湯気が上がりだして、ぼろぼろになった右腕が見る見るうちに再生していった。


「おおっ!?」

「どんなもんよ!」

 回復ぶりを見せつけるように、サクラが右手をブンブンと大きく振った。


 いまやバーサーカーの力を完全に使いこなしたサクラは、これほどの大ダメージであっても、わずか数秒で回復することができるようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ