表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/213

第156話 お使いドリアード

 みんなで冒険の神ミトラに神頼みをして、街でご飯を食べて。

 そしてもうあとは眠って、翌朝にはシャーリーのお父さんが出した最後のクエストに出発しよう――という前日夜のことだった。


『あ、パーティ『アルケイン』のハーレムキング発見!』


 そんな声とともに、屋敷の自室で荷物の最終チェックをしていた俺の前に突然現れた人物――正確には人ではないんだけど――がいた。


「うおぉっ!? びっくしりた!?」


『ちわー、はろはろー』


「その声、その姿……お前ドリアードか? ウンディーネのところに居たドリアードだよな? っていうかいきなり部屋の中に出てくるなよ、びっくりするだろ」


 そう言えば昔『精霊はエネルギー体なので、力の扱いに長けた高位精霊は瞬間的にエネルギー密度を限りなく落とすことで、塀や壁のすり抜けができる』とかなんとか精霊に関する専門書で読んだことがあったのを、俺は思い出していた。


 しかし知識としては知っていても実際に見るのは初めてだったので、文字通り突然部屋の中に出現したドリアードに、俺は驚きを隠せない。


『そうだよーん。あれ、荷造りしているけどハーレムキングはこれからお出かけ? それとも夜逃げでもするの?』


「なんで俺が荷造りしてたら夜逃げすることになるなんだよ。明日から次のクエストに行くから荷物の最終チェックをしてるだけだよ。それにハーレムキングってのは俺のことなのか?」


 俺がドリアードにどんな風に思われているのか、なんかもう色々すごく気になっちゃうんだけど?


「だってほら、パーティの女の子に色々やらかして修羅場になって、刺される前に逃げようとしているところかなって思ってさ。ハーレムキングは超可愛い女の子を3人もそろえて楽しくハーレムしてたでしょ? で、ちょっと調子に乗ってやらかしたと」


「そんなことは全くしてないし、パーティ『アルケイン』は南部諸国連合の評議会からお墨付きをもらっている最高位Sランクの冒険者パーティだよ。どんな事実誤認をしてやがるんだ。お前は俺にケンカを売りにわざわざこんなところまで来たのかよ?」


 ウンディーネやドリアードがいる『精霊の泉』からここまで、馬車で数日はかかる距離だ。

 もしそうならよほどの暇人――いや暇精霊だな。


『もう、そんなわけないじゃない。今日はお使いで来たのよお使いで』


「お使い?」


『そうよ、この前のお礼に来たの。ウンディーネに頼まれて、感謝の気持ちを渡しに来たんだから』


「感謝の気持ち? ウンディーネがプレゼントでもくれるってのか?」


『あんたたちが色々考えてやってくれたおかげで、ウンディーネのところにたくさん人が来るようになったんだよね。『精霊の泉』と古の盟約の噂も一気に広まって、おかげでウンディーネは今、知名度と信仰心が近年稀に見るハイペースでガンガン上がってるんだから』


「へー、そりゃ良かったじゃないか。俺たちも最上位精霊たるウンディーネの役に立てて良かったよ」


 ウンディーネと『精霊の泉』の話には攻略したアイセルの話も付随しているから、ウンディーネの知名度があるということは、つまりアイセルの知名度もさらに上がるってことだしな。


『でもそのおかげで『あー辛いわー、モテるって辛いわー。マジつらーい。次の『精霊格付け会議』で間違いなくS+ランクに上がっちゃうわー、どーしよう? ねぇドリアードぉ、私どうしたらいいかなぁ? 教えてくれなぁい?』ってウンディーネがずっと言ってきて超ウザいんだけどね』


「その姿が目に浮かぶよ……アホな上司を持つと大変だよなぁ」


『あ、分かっちゃう!? だよね! もうほんと、面と向かって邪険にもできないしすごく大変なのよ! 同じ自慢話を100回も200回もするなっての! 自慢したいならその辺の木にでも向かって好きなだけ自慢しろやこんにゃろう!』


 どうやらドリアードは、ウンディーネから事あるごとに同じ自慢話を聞かされて辟易しているようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ