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第107話 新作の杏仁豆腐

「そうだ、ついでにもう一つだけ聞きたいことがあるんだけど」


「なんだ? この際だから何でも聞いてくれ」


「じゃあ遠慮なく聞くね。ケースケが性的不能って言うのは本当なの?」


 はい、驚くほどド・ストレートに聞かれました。


「うぐ……まぁ、うん。でも若干改善の傾向が見られなくもないから、今は完全にそうだというわけではないというか。そう遠くない将来、復活するんじゃないかという期待を俺はしていてだな――」


 俺はこの件については即座に抗弁した。

 ちょっと早口で必死な感じで抗弁した。

 男としてのプライドが俺にそうさせた。


 なんていうかその、シャーリーにいいところを見せたいって気持ちが、なくはなかったかも……。


「あ、うん、そうね。もちろんアタシもそうなってくれたらいいなって期待してるから」


 そしてそんな俺の勢いの前には、さすがのシャーリーもたじたじの様子だった。


 そんな風にシャーリーとちょっと込み入った話をしていると、注文したスイーツが運ばれてきた。


「ちょうどいいタイミングね。それじゃあ面倒な話はもうおしまいにして、いただきましょうか。甘いものはやっぱりウキウキ楽しい気分で食べないともったいないからね」


「だな。うん、すごく美味しそうだし」


 俺は運ばれてきた杏仁豆腐を早速、スプーンですくって口に入れてみた。

 シャーリーも同じようにスプーンで杏仁豆腐を食べ始める。


「ん~~♪ いい味♪」


 シャーリーがお行儀悪くスプーンを咥えたまま言った。

 でもそんな子供っぽい姿を絶世の美女のシャーリーがしてるのが、またそれはそれでグッとくるんだよな。


 なんだよおい。

 シャーリーって改めて見たらめっちゃくちゃ素敵な女の子じゃないか。


 今まで俺、よくシャーリーの好意を完全シャットアウトしてたよな。

 当時はそれだけアンジュのことが好きで好きで仕方なかったってことなんだろうけど。

 結局、昔の俺は周りが全く見えてなかったんだろうな。


 俺はそんなことを少し考えながら、杏仁豆腐を食べ進めていく。


 しかし美味しいな。

 甘さはやや控えめながら、濃厚な味と香りがスッと口の中に広がっていくよ。

 食感もプルプルしていて絶妙だ。


「んー、でもこの味なんだろう。俺の知ってる杏仁豆腐とちょっと違うっていうか、なんとなく別に覚えがあるような……これは……なんだろう、大豆かな?」


 俺は舌に残る風味から、とある食材を導き出した。


「正解♪」


「ってことはもしかして牛乳じゃなくて、豆乳を使って作ってるのか? そういや最近豆乳を飲むのが流行ってるって聞いたような」


 豆乳は昔からある大豆から作った栄養飲料だ。

 でも独特の青臭さがあって、あまり一般的に飲まれてはいなかった。


 それが最近は甘味や他のフレーバーを加えたりして改良が進み、一般的な飲み物として女性を中心に健康飲料として話題になってるのだそうな。


「さすがケースケ、日々の情報収集と分析はお手の物ね。大正解よ。ね、すごく斬新でしょ? アタシも豆乳で作った杏仁豆腐を食べたのは初めてだったんだから」


「確かにこれは新しいな、意識してやっと豆乳だって分かるくらいに自然な味だし」


「豆乳は健康にもいいし一石二鳥よね」


「でも砂糖はいっぱい入ってるから、取り過ぎは禁物だぞ?」


「分かってるわよ。おデブちゃんになってケースケに嫌われたくないからちゃんと自制はします」


「お、おう……」

 だからイチイチそういうドキッとすること言うなよな?

 スプーン咥えながら上目遣いなのがまた反則的な可愛さだし。


 とまぁそんな感じで最初は込み入った話をしたものの、その後はスイーツとお茶を楽しみながらいろんな話をして過ごしたのだった。


 シャーリーとは年が近いのもあって気負わず気楽に話せるから、久しぶりにダラダラと過ごせた気がするな。


 アイセルやサクラの前ではやっぱり、年長者としての立場や責任を意識することが多いから。

 それはそれで頼られて悪い気はしないんだけど、どうしても完全に同じ目線には立ちづらいんだよなぁ。


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