地を這う虫けらの詩

アーケードの夜

　冬は夜が長いから好き

　明るい場所を歩くのは苦手だから

　人通りの少ない道を歩く

　冬の夜

　吹雪く道を通ってアーケードにゆく

　まだ人の多い場所を苦痛に感じなかった頃

　時々行った場所だった

　時が流れてさびれたせいか

　吹雪く夜だからか

　人通りは少ない

　アーケードの真ん中で立ち止まる

　屋根の下だからか風の音はしない

　さっきまでしていた自分の足音も今はしない

　店の多くはシャッターを下ろし

　客を引く男の寒そうな姿も今夜はない

　ないものが多いことに

　なぜか満たされる気がした