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虫けら
古い漫画で
父親が子どもに虫けらとは何か問われる場面があった
母親が父親を虫けらだと言っていたと
若かった僕は笑っていた
自分の未来は
もう少しは明るいんじゃないかと
そんなことを思っていた
漫画の父親はきちんと父親で
僕はいまだに人の社会に馴染めない
共に生きてくれる人もなく
明るい人生を歩んで······いないこともないか
求めるものが少なければ
それなりに楽しい
こういう者を人々は虫けらと呼ぶ
社会の中での向上心はないが
強くなりたいとは思っている
今の社会で強さなんて役に立つ場面は少ない
そもそも誰かを傷つけるのも好きではない
やっぱり僕は虫けらなのだろう
別に空など飛びたくもない
歩くことが好きだ
体が動くうちは
うろうろと地上を這い回るだろう
生きる価値などない身だけれど