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前にいた坂下も当然気付いた。
奥の薄暗いところに女が立っていたのだ。古めかしい黒のワンピースを着た、その顔も肉体も妖艶という言葉を具体化したようなやけに眼力のある黒く長い髪の女が。
俺は女に心底恐怖を覚えたが、なんと坂下は考えられないことに女に声をかけたのだ。
「大丈夫ですか。いったいなにがあったんですか?」
すると女は坂下に近づき、両手で坂下を押すと、壁に坂下を押し付けた。
そして坂下に抱きついた。
まるで愛しい恋人に久しぶりに会ったかのような、力強い抱擁だった。
――えっ?
わけがわからない。
坂下も戸惑い女を見ていると、女が坂下にキスをした。
これだけ艶かしい女にキスをされたのなら、いつもの日常においてなら喜ばしいことなのだろうが、今はいつもの日常ではない。
しかも見れば、坂下は全身を小刻みに震わせているではないか。
――なんだ?
すると坂下と女の口が少し離れた。
そして坂下の口からなにかが出て、女の口の中に入っていくのが見えた。
赤く染まったピンク色のぶよぶよしたもの。
俺は気付いた。内蔵だ。
女は坂下の内臓を吸い取っているのだ。
あまりのことに固まったまま見入っていると、やがて坂下からなにも出てこなくなった。
女が軽く坂下を押すと、坂下はその場にどたりと倒れた。




