表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

13

不思議なことに、私とお母様は、この貧乏生活のおかげでもっと近くなったような気がしている・・・。

 それまでは、貴族の女主人(=母)と、家庭教師に任されっぱなしの子女(私)だったのに。

苦しい時期には苦しい時期なりの何かをつかむことができるんだな、としみじみと思う。 

私が髪の毛を切り、ザンバラ頭で屋敷に戻ってきた時も、お母様は、眉をひそめたが、何も言わなかった。

ただ、私の頭を抱えて、胸に抱き寄せてくれた。

 その後、ジーンが私の髪の毛を整えてくれた。

最初のころは、ベリーショートっているより、もんちっち頭っていうの? 猿みたいに短い頭だったのだけど、最近はもうちょっと伸びてきて、前世では60年代ぐらいのレトロな髪形のセシルカットっぽい。

顔がなまじ西洋チックに凹凸あるので、結構似合っていると思う。

でも、パッと見、男の子だけど…。


まあ、それはおいといて、うれしいことに、なんとか私たちも領民も最初の冬を餓死せずに越すことができた。


税率を下げたのと、私たちの必死の熱意が村長たちはじめ、村民にも伝わったのだろう。 村を超えて助け合いを自発的に始めたらしいのだ。 これには補助金を作るために私たちが行っている魔物狩りも影響しているんだと思う。素直にありがたいと思う。


 

 畑仕事は冬場でも行われる。

冬には冬の野菜があるんだな~、と芽キャベツを眺めながら思う。

 手袋をしてもかじかみ、指先が真っ赤になってしまう中、霜がおりた芽キャベツを摘んでいく。

この芽キャベツは摘んでしまうと結構足が速いから食べる量だけとるようにする。

今の時期、出来る野菜は少ないから、毎日、毎日、芽キャベツが食卓に上る。

 私はあんまり芽キャベツが好きではないのだけれど、贅沢なんか言ってられない。

芽キャベツは塩ゆでして、チャンドラーが処理してくれた魔物の干し肉のあまりと保存してあったジャガイモで食べる。

 みんな忙しいから、いかんせん料理は簡単になるが、これも贅沢なんて言ってられない。

毎日食事にありつけるだけありがたいのだ。

 そうは思っても、やっぱり異常に食べたくなるものがある。

チョコレートとか。 

 口の中で甘くとろけるチョコレート。毎日食後に食べていたけど、もう何か月も食べていない・・・・。 

つらいな~~。 って、この程度のつらさなんてつらくない!って思うけど、やっぱり切実につらい・・・。


 私はいつもお母様と一緒にお母様の寝室で食事をするが、チャンドラーとジーンは台所で食べている。

 台所にあった、魔道具のコンロもオーブンもみんな売り払われてしまっていて、今は薪で火をおこして使う旧時代のコンロを使用している。

旧時代のコンロは火加減の調節も難しく、最初、ジーンは調理に四苦八苦していたが、今では結構慣れたと言っていた。


 この魔法の存在は、私の前世の記憶の世界とは全然違う世界なんだな、としみじみ思わせる。

と、言っても、魔術師とかには、私は会ったことがないのだけれど。

 魔術師になるだけの魔力を持つ人間は大変少なく、ベルナルドみたいな辺境に住んでいると、一生に1人会うか会わないか、って感じらしい。

お母様は昔王都のパーティーなどにも参加したことがあるらしく、何人かの魔術師を見たことがある、と言っていた。

 お母様は「魔力を持つって言っても見かけは普通の人よ。 違いと言えば、手の甲にツタの絡まるような柄が付いていることだけ」って言ってたけど、ツタの柄っていうのも面白いよな。 なんでツタ柄?

私の中での魔術師のイメージというと、こう長~いマントなんか着ちゃって、真っ黒な服着ているような、なんか人間離れしたようなイメージしかわかない。 多分私の前世の記憶のせいだと思うけど。

っていうか、どうやってツタ柄が皮膚に現れるんだろう? あざのような感じなのかな? それとも入れ墨みたいなもんかいな?ツタ柄っていうとなんか、日本の唐草文様を思い出すのは私だけ? 

 

当たり前のことであるが、もちろん、私には魔力なんかない。 前世の世界にもなかったし、自分が魔力なんか持っていたらちょーびっくりだよ!

手には、切り傷、擦り傷、豆はありますが、ツタの柄なんでありません!

 でも、魔法は普通に周りに存在する。そう、魔道具を通して。

 こんな辺境の地にも魔道具は結構浸透している。

コンロやオーブン、電灯、大きいものでは水車とかにも使われている。

 うちの領地にも魔石入りの大きな水車がほしい。 

水車はベルナルド家5代目の発明狂リーア(前世持ち)がこの世界に導入したものだ(身内自慢ではあるが!)。 元々の水車は前世の世界のように水の動力で動くものだったが、今ではそれに魔石も組み入れて、効率よく仕事ができるようなものが主流だ。うちの領地でもひとつあったのだが、1昨年の嵐で壊れてしまい、そのままほおっておかれている。

 魔道具の動力は魔石だ。

魔道具には魔法陣が組み込まれていて、魔石の魔力によって道具が動くらしい。魔石の動力は使いきっても一定の時間をおくと、動力がまた蓄積され再使用できる。

魔石には5傾向あり、火、水、風、土、光、とある。その傾向に沿って、必要な魔石を魔道具に装着すれば、誰でも使えるのだ。

 以前はこの屋敷にもたくさんの魔道具があったのだが、必要最低限を残してほとんど売り払ってしまった。

 魔道具もさることながら、魔石はとても高価なものだ。だから一番先に売れてしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ