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プロローグ

いつだって、自分は一人ぼっちだと思っていた。

まるで自分だけ、この世界から切り離されたかのような、そんな感じ。

大好きだった両親も、仲の良かった友達も、みんな俺を避けていく。なんで。

自分がこんな力を持っているから?

俺はこんな力いらない。

大切な人との関係を裂くようなこんな力、いらない。

俺はただ、温もりが欲しいだけなんだ。

あの頃の温もりが。

暖かくて、優しい温もり。

けれど同時に、叶えられない夢とも思った。

そんな途方に暮れていたとき。

麻帆良に来ないかと誘いがあったのは。






「むぅ・・・」

麻帆良学園、学園長、近衛近右衛門は悩んでいた。

近頃は物騒な世の中である。

学生たちが不審者に襲われるという事件があってもおかしくない。

生徒たちの安否が心配である。

というよりも、孫のこのかが。

重度の孫好きである学園長にとって、孫のこのかに手を出されるのは、許し難い事なのだ。

というわけで、学園長は手を打った。

孫心配性の学園長は、このかのいる女子中等部2-Aに護衛兼転校生という形で、新しい生徒を招くのだ。

もうすぐ、この扉が開かれ入ってくるはずだ。







着いた。

急に学園に来てくれと言われて、まだ数日しか立っていない。

しかし、緊張はなかった。

ここの学園長に来ないかと誘われたとき、学園長は自分の力を知っていた。

知っていた上で、来てくれと言ったのだ。

素直に嬉しかった。

自分の力を受け入れてくれる。

初めてだった。

だから楽しみなのだ。

これからの生活が。

この学園に転校生として招かれたのは知っている。

正直、勉強は面倒だが、クラスに転校するのは絶対条件ので、そこは仕方がない。とにかく、これからの学園生活に心踊る自分が確かにいた。

そして今、この扉を開き、中に入る。


「よく来たの」

「この度の件はありがとうございます学園長」

少年は礼儀正しく一礼する。

「うむ。では早速、君の役割について説明しようかの」

学園長はその長い髭を撫でるように触る。

「君も知っての通り、君には我が麻帆良学園の女子中等部に転入してもらう」

「え・・・?」

唖然としたように、一言だけ言葉を漏らす。

「何か問題でもあるかの?」

「あの・・・女子中等部に転入なんて一言も聞いてないですよ?」聞き覚えのない言葉に、次第に不安が募ってくる。

「まあいいわい。それで君には影の任務としてこの麻帆良学園の警備員もしてもらいたいのだが・・・」

「ちょっとまってください!」

開口一番、学園長の言葉遮る。

「何ですか女子中等部転入って!? そんなの聞いてませんよ!」

「そんなことないと行った覚えはないぞい」

自信満々に学園長は言う。

確かにそうである。

話があったとき、この学園に転入するとしか聞いていないのだ。

それをどう解釈するかは学園長次第である。

「嬉しいじゃろう。女子たちに囲まれての学園生活」

「えっと、あの・・・」

言葉に詰まる。

今更なにかいったところで通じるような相手ではないのは、火を見るより明らかだ。「では早速じゃが、市内の警備をしてもらおうかの」

「だから、その・・・」

必死に反論しようと言葉を出そうとするが、そんな余裕を与えてくれない。

「夕方になれば一旦こちらに戻ってくるのじゃぞ」

「・・・・・・」

もはや喋ろうとはしない。

「では期待しておるぞ、桜井依人(さくらい よりと)君」

依人は渋々ながらに肯いた。




さて、どうしたものだろう。

警備とは言っても、ここは見れば見るほど事件などとは無縁そうな場所だ。

住んでいる人々もみなにこやかだし、通っている学生も見たところいい人に見える人が多い。そのせいか。

「おいおい姉ちゃん、これどうしてくれんの?」

ごく少人数側の人間が大変目立ってしまうわけで。

見たところ依人と同じくらいの年齢のツインテールの少女と黒髪のロングヘアーの少女が、不良ぶっている数人の男に絡まれていた。

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