八百万の頂点
あたり一帯を真っ赤に染める炎は、まさしく神の怒りを表していた。メラメラと全てを飲み込むと燃える炎は明らかにこの世のものとは思えない。そして、その炎は爆炎となり目を潰さんばかりの光を発し、空間を揺らしていた。その炎を操る女性は、この世界で炎神と呼ばれる女神様だった。
「オラッ!」
また爆発が起きた。これでもう何度目だろうか。炎を操る彼女の両手の攻撃が止む気配はない。
「そろそろ、やめなさい。」
そんな彼女を後ろから見ていた一人の眼鏡を掛けた女神様が、止めるように言った。
「オラッ!オラッ!」
しかし、それでも炎の女神様はその手を止める事はない。何度も何度も殴り続ける。
「はぁ~、全く。戦闘となるといつもこうなんだから。ほらっ、やめなさい!」
眼鏡を掛けた女神様が炎の女神様へと、上から水を掛けた。それにより、炎の女神様の拳の炎は消えて、彼女自体がビショビショに濡れた。
「何すんだてめぇ!」
こんな事をするのは水の女神様と呼ばれる、炎の女神様と仲が悪い眼鏡を掛けた女神様しかしない。それを分かっている炎の女神様は真っ直ぐ彼女へと突っかかった。
「いい加減やめなさいと言っているのが聞こえないのかしら?このアホ脳筋には」
炎の女神様が怒っているにもかかわらず、そのまま毒を吐く事ができるのは彼女くらいだ。
「ああ?俺らの事をバカにしたんだからまだ、足りないくらいだろう。」
彼女はそう言うが、未だに真っ赤に燃えている炎は、普通に見れば明らかにやり過ぎなのだとわかる。肉で言うと、炭素の塊を通り越して、ダイアモンドができているのではないかと思うくらいの焼き加減だ。
「これは流石にやり過ぎじゃろ。」
「まあ、炎神ですから仕方いないでしょう。」
後ろの方で、自分達に結界を張っていたもう二人の女神様も、燃え盛る炎の前に集まっていた。
「それではさっさと、証拠の隠滅をしましょうか。いくら私たちを侮辱したとは言え、こいつは一応神ですから。他の世界の神にバレないよう、どこかに」
「本当に舐め腐ってやがるな、小虫どもが。」
水の女神様がこれからの指示を出そうとした時だった。炎の中から声が漏れた。それには、明らかに怒気が含まれていた。
「こっちはとっくにブチ切れてんだよ。」
そして、燃え盛る炎の中から彼?は何事も無かったよう現れた。
「お前ら!どけっ!」
またも、初めに飛び出したのは炎の女神様だった。先程よりもっと強い限界の炎を両手に纏っている。今度はそれを交互に殴るのではなく、両方一気に彼?へと放った。
「まず一つ。この程度の炎で私を殺せると思ったこと。」
「バ、バカ、な」
しかし、彼?はその炎と拳を右手で掴むだけで防いでしまった。
「お前ら小虫は、私を何の神だと思っているんだ?」
彼女の自慢の炎は彼?の手の中から出ようとするが、彼?が軽く力を入れただけで、その炎は霧散した。
そして、今度は彼?が彼女の腹に拳を一発打ち込んだ。それと同時に炎の女神様とは比べ物にならない程の炎のが彼女を貫いた。その衝撃で空間にヒビが入った。
「・・・カヒュッ」
もはや、声すらあげることはできなかった。喉で何かが掠れた音が響き、そのまま炎の女神様は前のめりに倒れた。彼女の腹には大きな焼け焦げた穴が開いていた。
「お前の攻撃など、マッサージにもならなかった。ぬるいにも程がある。子供用か?」
他の3柱の女神様はやっとここで気づいた。彼?が神の中でも絶対に敵に回してはいけない相手だということに・・・。




