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道のり

 深い緑色の木々が生い茂る暗い森に突然光が現れた。その光は空間をぐにゃりと曲げると、人が一人通れそうな穴を作った。そして、その穴からのろりと現れたのは、日本の主神天照大御神様だった。


「まあ、この辺りでいいだろう」


 天照大御神様が穴から出ると、その穴は次第に塞がっていった。


「はぁ、こんなチマチマ行くのは面倒くさいな」


 今、天照大御神様が使ったのは別空間同士をつなげる転移の様なものだ。この世界ではワープと呼ばれる超高等魔法だった。空間を繋げるというのはとても難しく、人間だと精々500メートルが限界だ。だが、天照大御神様程のお方ならば先程の国から目的地まではこの魔法で一瞬で行けるだろう。しかし、あえてそれはしなかった。なぜなら、そこまでの距離を繋ぐことが出来る者はこの世界には神以外いないからだ。もしここで、そこまでの力を使うとこの世界の神に一瞬でバレる。そうなっては、元も子もない。その為、バレない様に人間が使える距離範囲内の転移しか使わなかった。それでも、あまり使いすぎると感づかれるので、一回使っては歩き、使っては歩きを繰り返していた。


「後山を二つほどか。今日はもう転移を使わないとして、このまま歩き続ければ日の出辺りには着くな」


 整備のされていない道無き道を、草木を分けながら進んでいく。しゃくしゃくとなる地面はまるで生き物の様に鳴いている。それから30分くらい経った頃、周りの環境に異変が生じた。数人の人間が天照大御神様を囲っていた。バレないように足音を消しながら歩いているが、気配でわかった。


「私に何の用だ」


 あまりにも鬱陶しかったので、堪らず声を出した。


「 ・・・何だ、バレてるんじゃ仕方ねぇな」


 その中でも、ひときわ大きな男性が足音を立てながら近づいてきた。それと共に、周りにいた奴も続々と姿を現す。


「有り金全部置いてきな、身ぐるみもだ。」


「へっへっへ、抵抗しない方がいいぜ。」


 明らかに身ぐるみを置いたくらいでは見逃すつもりもない雰囲気を醸し出している。


「はぁ。」


 天照大御神様は大きなため息を吐き、心底嫌そうな顔を見せる。


「今の私に構うな。殺されたいか。」


 本気の殺気を体から放つ。周りの木々が逃げるように避けていく。それは、盗賊も例外ではない。今、自分の死に際が、首が落ちる様が脳に鮮明な映像として浮かんだ。


「あっ、あ、あー」


 目の前でそれをもろに食らったリーダーらしき男はその場を動けず、声も出ない。天照大御神様はそれを気にせず、そのまま彼へと歩み進める。


「あっ、や、やめ!」


 声を発した時にはもう遅かった。既に、彼の目の前に死は訪れていた。


「あっ、あーーーー」


 彼は余りの恐怖に耐えきれず、その場に膝から崩れ落ちる。目は白目をむき、口からカニように泡が溢れている。天照大御神様はそれを避けると、そのまま歩を進めた。周りの彼の部下たちはただ、その背中を見ることしか出来なかった。





「やっとついたか。」


 日が真横から登り始めた頃、やっと山を超え目的地に到着した。道中に、あの連中とは他に幾つかの盗賊にあったが全て同じ手段で対処できた。しかし、猛獣の類には出会わなかった。寝ていたわけではない。あの夜だけは山の獣は主に至るまで全ての獣が目を覚ましていた。尋常ではない寒気を感じたからだ。他の獣は野生の勘で分かっていたのだ。決して手を出してはいけない相手が、今ここにいるのことを。まるで、嵐が過ぎるのをまつ小鳥の様にただ静かにその者が居なくなるのを待っていた。天照大御神様も、自分に害を及ぼさない限りは何もしなかった。ただ、盗賊に向けた殺気にあたり、ショック死した臆病な動物が何匹かいた。

 そんな事は特に気にしていない、天照大御神様は目的地である目の前の大きな建物を眺めていた。


「さて、じゃあ乗り込むか。この世界の神は私を怒らせない奴であってほしいな。」


 そこはこの世界の主神を奉る、神殿だった。

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