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異世界にて、なぜそこに日本人が?

 そこは、魔法が存在するファンタジーの世界。コンクリートの様なものは存在せず、木や藁、石などでしか家を作れない日本からしたら遅れた文明の世界。しかし、その世界の住民はそれが普通であったし、それ以上のことなど貴族や王族の暮らしくらいしか知らない為、不自由だとは思った事はなかった。24時間営業をしているコンビニも無ければ、整備された水道すらない。医療も魔法で治せるからと、発展していない為、衛生も良くない。宗教組織が大きな顔をし、平民から財を貪る。それを、神の意思だと信じて喜んで渡す平民。そんな世界に飛ばされ、魔王を倒せと言われれて喜ぶのは日本人くらいだろう。

 そして、その世界には日本の主神天照大御神様が秘密裏に潜入していた。


「はい、ビール四つとプライドポテト、おまちどうさま!」


 現在、天照大御神様は勇者が召喚されたという国にある小さな居酒屋にいた。その店では頭からうさ耳を生やした少女が元気な声で、働いている。年は16、7くらいだろう。ピコピコと動く耳が彼女の愛らしを増していた。


「はぁ、因果律の調整を狂わすとああいうのが生まれちゃうんだよな。」


 天照大御神様はそんな彼女を見て、疲れた様にため息を漏らす。彼女の様に、ウサギと人間が混ざったようか獣人族は因果律の狂いからくるものだ。因果律というのは、細かく見ると毛細血管のようなものであり、それぞれの動物の種族ごとにそれはある。だが、この世界はその様に因果律を扱わず、それら一つ一つを纏めた一本の大動脈と考え、全体に関わる大まかな修正しか行っていなかった。故に、種族の因果律が絡まりあって獣人族の様な混合された種族が生まれてしまったのだ。


「おい、兄ちゃん。そんなにジロジロ見て、あいつがお気に入りかい?」


 カウンター席に座っていたので、店主と思しきおやじが話しかけてくる。


「いや~、あいつは内の看板娘でな。あいつを見ると元気が出るって、男共が集まってくるんだ。そのおかげでウチは大繁盛だ。がっはっはっはっ!」


 大きな体躯で大きな口を開けながら笑う様はまるで獲物に襲いかかる熊の様だ。小さい子が見たら泣き出そうな雰囲気のおやじは先程から何かと絡んでくる。見ない顔の者だから何かと気になっているのだろう。


「それで、兄ちゃんはどこのもんだ?ここいらじゃ見ない顔だが、何しに来たんだ?」


「・・・・なに、ちょっと気になる人に見に来ただけだ。」


 仮の姿をして、気づかれないようにしているとはいえ、馴れ馴れしく話しかけてくるおやじに、流石にイラっとくる。だが、ここでキレては元も子もない。グッと気持ちを抑える。


「へ~、どんなやつだい?」


「最近この国で有名な勇者だ。」


「ほう!そいつはまた!」


 勇者と聞いた途端、何が嬉しいのかおやじは楽しそうに声を上げた。


「知っていることがあるなら少し教えて欲しい。」


 今回の目的の一つである、この世界に渡った日本人がどの様な暮らしをしているかの情報収集に入る。


「やあ、あの勇者様達には本当に感謝してるぜ。ついこの間、ゴブリンが大量発生してな、この国に押し寄せてきやがったんだ。その大群を見た時には、俺はもうダメだと思ったね。周りの奴らもみんな諦めかけた時だ。突然黒髪の四人のガキが現れたと思ったら、瞬く間にゴブリン共を全滅させちまいやがった。俺は夢でも見てるんじゃないかと思ったぜ。剣が光ったと思ったら、何千ものゴブリンの体が半分になってたり。杖をかざしたら、上から大量の岩が降ってきたりと」


「ちょっと待ってくれ!今、四人といったか?」


「えっ、あ、ああ」


 天照大御神様は突然大声を出して、おやじの話に割り込んだ。彼の話に信じられない点があったからだ。


「なあ、召喚された勇者は何人だ?」


 威圧を放ちながら質問する目の前の客におやじは少し動揺しながらも答えた。


「よ、四人だが」


 おやじがそう言うと、何か腑に落ちない事があるのか、客は何やら一人でブツブツ呟きだした。


「お、おい、どうかしたのか?」


 突如、雰囲気が変わった客に話しかけるも、返事はない。何か呪文の様に呟いている。だが、少しすると今度は何か思い立った様に立ち上がった。


「ごちそうさま。お金はここに置いていく。釣りはいらない。」


 そう言って、足早に店を出て行った。最後にポツンと残されたおやじは、彼の置いていった会計を見て驚いた。


「これ、金じゃねぇか」


 細長い丸をしたその金の塊は見たことのないくらいきれいだった。それは、日本で言うところの小判に当たるものだった。明らかに払いすぎの客の代金に、あの情報にそこまで値打ちがあったのかとおやじは少し恐ろしくなった。

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