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絶望と女神の協奏曲:第二楽章

「ああああああああああああああああああああ!」


 赤子の様に泣き叫ぶ女性は、鼓膜を破らんばかりの鋭さをもった声を辺りに撒き散らしていた。


「うるさい」


 近くにいた彼?がそう言うと、ピタリと彼女の声が止んだ。しかし、彼女の口は未だに声を上げながら叫んでいる。ただ、声だけが抜き取られたかの様な感じだ。悲痛に歪む彼女の顔は勇者達に見せていた様な神々しさは既に失われていた。


「はぁ。この程度で泣きわけめくな。鬱陶しい。まだまだ、これからなんだから。」


 いくら彼?が声をかけても、今の彼女には届かないだろう。それ程までに、彼女の心はこの一瞬で破壊された。


「このまま始めても意味がない。おい、和泉梨々香」


「はい。」


 彼が呼ぶと、どこからともなく一人の少女が現れた。それれは、かつてリリーと呼ばれていた女神だった。


「あいつを何とかしろ。このままじゃ今からやる事の意味がなくなる。」


「わかりました」


 彼女は壊れた目覚まし時計の様に泣き止まない元上司の前まで行くと、女神の頭に手をかざした。彼女の手から青色の光が放たれ、その光はベールの様に女神を覆った。すると、徐々に女神の表情が落ち着いていき、こちらの世界に戻ってきた。


「・・・リリー?」


 突然、哀しみが消え、心が落ち着いたの思ったら、目の前にいる彼女を見て、やっと我に返った


「リリー!あー、リリー!貴方は無事だったのですね!そうです、リリー!貴方なら変わり果ててしまった彼女達を・・・」


 そこで、ようやく女神は彼女の変化に気づいた。


「あなた、リリーですよね?」


 女神の記憶の中にある彼女と今目の前にいる彼女とは少し違った。大人びた美しい顔つきは、幼さが残る程度まで若返っており、服も女神の世界にはない服の「セーラー服」と呼ばれる服を着ていた。髪はポーニーテールにしており、その姿は初めて彼女が女神の世界に来た時と同じ姿だった。そして、何より感じたのは彼女が自分を見る目だ。今までこの様な目で見られたことは一度もなかった。まるで、何かを哀れむ様なそんな目を。


「いえ、違います。リアリー」


 彼女は静かに答えると、少しづつ顔を近づけていく。


「私の名前は和泉梨々香。もう、貴方の知る彼女はいません。いえ、そもそもそんな女神は、ハナからいません。だって私は私でしかない。リリーでもない。癒しの女神でもない。ましてや、異世界を救った勇者でもない。私はただの人間、和泉梨々香です。」


 そう言うと、彼女は顔を女神の顔から離した。そして、そのまま静かに彼?の後ろへと侍る。それを、何も言えずに、ただ呆然と黙って見ていた女神は、一瞬悲しい顔を浮かべると、少しずつ顔を強張らせていった。そして、今この状況の原因たる彼?に向けてこう言った。


「私の娘達に何をしたあああああ!」


 今度は明らかに御門違いな怒りを彼?へとぶつける。しかし、彼?は笑っていた。やっと本心を表した、醜い女神に会えたことにーーー

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