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ニーソ無双  作者: へべれけ
真剣
1/3

ニーソ爆誕

チリンチリン、後ろの方から自転車のベルの音がした

別に道の真ん中を歩いていたという訳ではないし、横には自転車一台位は十分通れるだけのスペースはあったが、俺は道の端の方へと避けて道を譲る

すると、俺の横を自転車に乗った女子高生が通り過ぎて行った


" あのサドルになりてぇー "

走り去って行く少女の後ろ姿を見ていたら、そんな言葉が脳裏を過った


昔、俺が学生だった頃

友達と一緒に下校する途中で、俺達を自転車で追い越して行った女子クラスメートの後ろ姿を見ながら悪友の一人が言った台詞だ

当時は、皆で笑いながら其奴をバカにしたものだったが・・・


実は今でも俺は其奴の事を馬鹿にしている

別に其奴の事が嫌いとか言う訳ではない

寧ろ、俺は今でも其奴の事を親友とさえ思っている

唯、其奴の志の低さに・・・

自転車のサドル程度で満足してしまう、その志の低ー





パッパー!!!!!





突然、車のクラクションの音がして俺はハッと我に返った

いつの間にか物思いに耽っていたらしい

我に返った俺の目に最初に飛び込んで来たのは歩行者用信号機の赤く光るライトだった

そして次の瞬間、俺は・・・


━━━━━━━━


気がつくと白い部屋の中にいた





「何だ此れ?」

其れが俺の第一印象だった


部屋の中を見回すとだいたい5m四方、天井は3m程だろうか?

部屋は壁も床も天井も白一色で、家具一つ無い

其れどころか窓や扉、照明すらも無かった

それでも周りが見えるのは、部屋全体がぼんやりと光っているからだ

一通り部屋の中を見回して正面を向くと、其処には白いドレスを着た美しい女性が立っていた

いきなり目の前に人が現れたのだ、本来であれば驚く所なのだが、何故か俺は彼女が其処にいる事が当たり前の様に感じていた


「えーと、貴女は一体・・・」

正直、混乱していないと言えば嘘になる

だが、このままでは埒があかない

俺は意を決して、急に目の前に現れた美女に話掛けた


「初めまして、貴方の世界の言語で言えば私の名はウンディル・クレーデル。此れから、貴方が赴く世界の管理者をしております」

彼女は和かに微笑むと、俺の問い掛けにそう答える


「え?あ、えー。俺は志多木、志多木宗篤です。えーっと、ウンディ・・・」

「ウンディルで宜しいですわ」

「えー、では、ウンディルさん。此処は一体何処?俺が行く世界ってどう言う事ですか?其処の管理者?それから・・・」

頭に浮かんだ疑問が次々と口をついて出てくる

自分でも焦って居るのは判っているし、この様な時こそ落ち着いて対処しなければならないと云うのも理解している

だけど一度話し出すと歯止めが利かなくなっていた


「落ち着いて下さい、志多木さん。聞きたい事は沢山あるでしょう。今から其れらの事に付いてご説明致しますわ」

そんな俺に微笑みながら、彼女はそう言うと右手を軽く上げた

すると、何も無い空中にスクリーンの様なモノが現れる

半透明のスクリーンは向こう側が透けて見えている

彼女がその表面に手を触れると、タブレットPCのタッチスクリーンの様にスクリーン上に画像が浮かび上がった

彼女はその後しばらくそのスクリーンを操作していたが、準備が終了したのか、俺の方を向くとこう言った


「さてと、宜しいですか?其れでは先ず、事の経緯からご説明致しますわね」

そう言うと彼女はにっこりと微笑みー

そして、長い長い話が始まった


━━━━━━━━


ウンディルの話はとても長かった

其れは其れは言葉では言い表せない位長かった

だが、敢えて要点だけを掻い摘んで話すとこんな感じだった


先ず彼女、ウンディルはこれから俺が送られるという世界、トゥルサの管理者だ

管理者というのは、いわば神様の様なもので、管理下の世界が安定して発展する様に管理する存在なんだそうだ

そして、彼女の管理するトゥルサという世界は、デミヒューマンや魔法が存在し文明は地球の中世ヨーロッパレベルで、所謂フアンタジー世界というヤツらしかった


問題は、何で俺がそんな世界に送られなければならないのかだが・・・

其れには到達者と言うのが関係している

到達者と言うのは神様の見習いの事で、その名の通りこの世界の知的生命体が修練を積んで辿り着く存在なんだそうだ

地球でも修行を積んで悟りを開けば解脱出来るという話があるが、このトゥルサという世界ではその様な事が実際に有るそうだ

神様の見習いになると言う位なのだから当然その難易度も極めて高く、其れこそ数百年とか数千年に一柱有るか無いかなんだそうだが、数十年前にこのトゥルサに一人の到達者が現れたらしい

だが、そこで問題が発生した

彼が闇堕ちしたのだ


彼は自らを魔王と名乗りトゥルサを支配せんと暗躍し出した

その能力が神に近いが故に彼の行動が世界に与える影響を憂慮したウンディルは、管理者として異世界から未だ消耗しきっていない状態で離脱した魂を召喚し、道を踏み外した到達者を排除する為に利用する事にしたんだそうだ


では、何故わざわざ異世界から召喚するのか?

この世界の中だけで何とか出来なかったのか?

俺は、ここの処がとても疑問だったので直接聞いてみた

その回答はこんな感じだ


先ず、ウンディルはこの世界に直接干渉出来ないらしい

これは、管理者権限の制約と言うヤツで、この世界の神の様な存在である管理者が直接世界に干渉すると、世界に与える影響が大き過ぎるんだそうだ

又、この世界の住人達がこの問題を解決する事も難しいらしい

何故なら、これが通常の災害等であれば神託と言う形でこの世界の住人達に対応策を授ける事で対応出来るらしいんだが、今回の場合相手が神に近しい能力を持つ到達者である為、その能力に対抗する為に到達者と同等かそれ以上の能力が必要となる

もし、そんな能力をこの世界の住人達に与えてしまえば、其れは到達者の安易な量産に他ならない、例え今回魔王を倒せたとしても魔王を倒した者達がその後、その力をどの様に使うか予測出来ない

最悪、力を与えた者自身が第二の魔王となる可能性さえ有んだそうだ


そこで出て来たのが異世界からの魂の召喚とその利用だ

元々、理の異なる異世界の者であれば仮に管理者権限の一部、つまり神の能力の一部をその者に付与したとしても、基本的な世界の理の違いからこの世界に与える影響が小さいそうだ

例えば、チートなスキルを与えたとしても其れが子孫に受け継がれる事は無いとか、チートな武器を渡した場合、当然当人以外が使えない様に制限を掛けるんだが、この世界の魂に対応させると極めて稀に別人が其れを使えてしまう事が有るらしい

しかし、異世界の魂に対応させる場合にはそのリスクを無視出来るとか、要は面倒が無くて使い勝手が良いんだそうだ


唯、異世界からの召喚にしても問題が無いわけではないそうで

先ず、魂の親和性というのがあるらしい

この世界に限らず異世界の魂というのはその世界にとって明らかな異物で、特に生と死というサイクルで魂を循環させている場合、そこに全く異質な魂を放り込むと、このサイクルが機能不全を起こしてこの世界全体に悪影響が出てしまうらしいんだこれが


又、これは召喚される側の魂にも当てはまり、この世界との親和性が低いと世界そのものの圧力で魂が摩滅して、存在そのものが消えてしまうらしい

なので、召喚される魂はこの世界との親和性が高い異世界の中でも、よりこの世界との親和性が高い魂が優先的に選ばれるそうだ

つまり、今俺が此処に居る訳は俺の魂がこの世界との親和性が高い為という訳だ

そしてもう一つ重要な事がある

それは数だ


幾ら親和性が高いからといっても、この世界にとって異物で有る異世界の魂を一度に大量に投入してしまうのも不味いらしい

その為一度に投入出来る魂の数と有る一定期間に投入出来る魂の数に限りが有るそうだ

きっと効果が高くとも強い薬を一度に大量に投与するとその分強い副作用が出ると言う事と同じなんだろう

だが其れが不味かった

何故なら其れは、戦力の逐次投入に他ならないからだ

実際、俺は"最初の一人"では無いらしい


俺より前にも異世界から召喚された幾つもの魂が魔王を倒す為にこの世界に投入され、そして魔王に各個撃破されて行ったそうだ

更に素敵な事に俺は"最後の一人"でも無いらしい

つまり、俺がダメでもこの女神様には次があるって言う事だ

そう、この女神様にしてみれば例え何千何万もの犠牲を出そうとも、たった一度魔王を討伐出来れば其れで良いんだ

しかもその犠牲はこの世界の理りの外に有る"異世界"に由来するものなので、彼女自身の査定には直接的には影響が無いそうだ

その為にリソースとなる魂は、各世界の管理者同士の間でイレギュラーな事態に対応する為のローリスクな保険として、暗黙の了解の内にやり取りされているらしい


特に俺が居た世界は数十億を超える魂が有る為、今更千や万程度の魂が消えても誤差の範囲で、だからこそこの女神様はこんな非効率で何の進歩も無いやり方を漫然と繰り返してるんだろう

唯、随分長い事到達者が解脱もせずに地上で遊んでいるという状況は流石に不味いらしく、そろそろ彼女の査定にも影響しそうなんで、もし魔王討伐の任務を了承してくれるなら前任者達よりも強めの能力を授けてくれという事らしい


最後に、"彼女の査定"についても触れて置こう

彼女達の様な存在にも社会というものが有るそうだ

其れは俺達の社会とは随分と毛色の異なるモノなんだそうだが其れでも上下関係というものは有るそうで、彼女達管理者は自分の担当世界を管理すると同時に、より上位の存在に管理されているんだそうで神様の社会も其れは其れで世知辛そうでは有る





まあ、女神様のお話を纏めると大体こんな感じだ

少し長めだったかも知れないが宇宙開闢の所から話されるよりは遥かにマシだろう?

実際俺はそんな一昔前の漫画のギャグの様な事を実体験させられたんだぜ?


しかも途中でツッコミを入れる事さえ出来ずに結局最後迄聞かされたんだ

いくら時間の概念が無かったとはいえなかなかの荒業だったぜ

おかげで自分の置かれた状況だけは嫌という程理解出来たけどな

問題は此の状況を理解した上で彼女の申し出を受け入れるかどうかなんだが・・・


「どうでしょうか?魔王を倒しこの世界を救っては頂けないでしょうか?」

俺が思案顔をしているとウンディルが尋ねて来た

そして彼女は更に言葉を続ける


「確かに困難な事柄で有り"前任者達"が失敗し続けているのも確かです。ですが其れは前任者達の対応が適切で無かった為で有り、理論上最適解を選択し続ければ決して不可能な事柄では無いのです。それに魔王討伐の暁には貴方にこの世界で自由に行動する事を許しましょう。一世代限りの限定的なものでは有りますが、貴方方の世界で言う処のチート能力を維持したままでこの世界で自由に活動出来るというのは貴方方にとっては十分な報酬足り得る事柄ではありませんか?


さあ選んで下さい、神々が鍛えし剣、神の祝福を受けし盾、神の如き力を振るう魔杖、此処には管理者権限の行使を可能とする能力を秘めた様々な品々があります。しかも此れらの品には是迄の前任者達の活動が記録されていて貴方の魂の一部を複製して封じる事により、その品は貴方だけにしか使用出来なくなるだけでは無く様々な状況で助言を行うアドバイザーとしての役割も果たす事が出来る様に成るのですよ。又、もし貴方が望むなら、品々の代わりに貴方自身が使用可能な能力を一つだけ与えましょう。

この場合アドバイスを受ける事が出来無く成りますが、適切に行動すれば魔王を討伐する事は十分に可能です。さぁ、貴方は何を望みますか?」

ウンディルが一気呵成に畳み掛けて来る


先の話からすると"査定"の関係で彼女は結構追い詰められているのかも知れない

もしそうならば、そんな状況でも自身に不利な内容迄教えてくれた彼女は信用に値すると思う

しかし、其れは其れ此れは此れだ

彼女が信用に値するからと言って"前任者"達が失敗し続けているという事実は変らない

其れは例え神の力の一部、この世界の管理者権限の一部を与えられたとしてもこのミッションが極めて高難易度で有る事を意味している



だが、俺の答えは既に決まっていた


━━━━━━━━


「はい?」

管理者、いや、この場合は女神と呼んだ方が良いのか?

何方にせよウンディルは、俺の答えを聞いて間の抜けた声を上げた

だから俺はもう一度、先程伝えたのと同じ答えを彼女に返す


「神々が鍛えし剣も神の祝福を受けし盾も神の如き力を振るう魔杖も神に等しき特別な能力も、そんな物など何一つ要らない!だから頼む!!俺を・・・"パンティ"に転生させてくれ!!!」


「・・・」

「・・・」


「・・・・・何を言っているんですか?貴方」

暫くの沈黙の後、俺の心からの懇願にウンディルは抑揚の無い冷め切った口調でそう言い放つ


「パンティだよ!パンティ!!知らないのか?管理者なんだろう?神様なんだろう?なのにアンタはパンティも知らないというのか!?」

「そんな事を言ってるんじゃありません!貴方は一体何を言っているのかと言っているのです!」

「この俺が魔王でも何でも倒してやる!だから俺をパンティにしてくれと言っているんだ!!」


「・・・」

「・・・」


「すみません、全く理解出来なかったのでもう一度言って頂けますか?」

「ハァ、全く・・・」

俺は一つ溜息を吐くとウンディルに近づき、そのドレスの裾を捲り上た!


「キャアアアアアァァァァァ」

其れと同時に絶叫が辺りに響き、力一杯振り抜かれた拳が俺を弾き飛ばす

俺はそのまま数メートル程宙を舞った後、地面に激突して更に数メートル転がり壁に当たって漸く動きを止めた


「い、一体何を・・・」

「其れは此方の台詞です!」

殴られた頬を押さえながらヨロヨロと立ち上がる俺に、ウンディルが乱暴な言葉で返してくる


「お、俺は唯、ウンディルがパンティがどういうものか知らないかもしれないから其れを説明しようと思って・・・」

「其れで何でいきなりスカートを捲り上げるんですか!?」

「いや、格好からして履いてるんじゃないかなーと」

「履いてるんじゃないかな?もし、私が履いていなかったらどうするつもりだったんですか?」

「でも、履いていたじゃないか!」

「見たんですか?」

「え・・・い、いや、其れは・・・」

「見たんですね?」


「・・・」

「・・・」


「とても・・・黒かったです」

ウンディルの体重を載せた拳が俺の顔面に炸裂した


━━━━━━━━


"リアルはクソゲーだ"

誰が言ったか知らないが、そんな言葉がある

俺にとってその言葉は、半分は真実で半分は偽りだった


こう言っては何だが、俺のリアルは結構充実してた

友達もそれなりにいたし、恋愛経験も有る

勤め先は結構ブラックだったが、死ぬ程無茶な要求はされなかった

単調と思えた日常でさえ、今思えばそれなりに充実していたと思う

だがしかし、その様な中にあって俺は常に言葉にならない不満を抱き続けていたんだ


それは、俺が人間である事ー


何故俺は人間に生まれてしまったのだろう?


アンタは思った事は無いか?

例えば同僚の女性が椅子に座っているのを見た時

例えば運動をした同級生が階段の手すりに腰を預けて休憩しているのを見た時

例えば道で自転車に乗った女子学生とすれ違った時


アンタは思った事は無いか?

あの椅子になりたいと

あの手すりになりたいと

そして、あのサドルになりたいと


此れはフェチでは無い!

断じて特殊性癖等では無いんだ!!


そして今、俺は千載一遇のチャンスを手に入れた

異世界への転生


例え其れが異世界とはいえ自らの自我を保ったまま別の何かに生まれ変われるという事だ

そう、"別の何か"に、だ!


で、あるのなら、俺は頂点を目指す!

この千載一遇のチャンスを利用して天下を取る!

だからこそ、だからこそ俺はー



━━━━━━━━


「は!」

意識を取り戻した俺の目の前には、今となっては見慣れた白い部屋が在った


「夢じゃ・・・なかったんだ・・・」

ふと横を観るとウンディルが憔悴しきった顔で俺を見つめている

彼女は俺が意識を取り戻したのを見ると、此方に近付いて来た



「志多木さん・・・」

「宗篤と呼んでくれ」

「・・・志多木さん、良く聞いて下さい。此れはとても大事な事なんです」

俺のフレンドリーな提案をスルーしてウンディルは話を続けた


「この世界トゥルサは今、大変危機的な状況に在るのです。そして、貴方にはその危機を退ける事が出来る可能性が有る。そう、貴方はこの世界の救世主、世界を救った勇者になる事が出来るかもしれないのですよ!志多木さん、これは貴方にとてっもチャンスの筈です。先程も説明しましたが、貴方には私達管理者の権限の一部が譲渡されます。其れは路を誤った到達者"魔王"を倒す事を可能とする能力です。お願いします志多木さん、その能力で魔王を倒し、この世界トゥルサを救って下さい!」

ウンディルの瞳が真っ直ぐに俺を見つめる

その瞳には、真剣で真摯な光が宿っていた


「危機的状況か・・・。判っている、拭き残しが心配なんだろう?」

「は?」

「確かに、技術レベルが中世のヨーロッパ程度ではウオシュレットは疎かトイレットペーパーすら無いだろう。縄で後処理をしていれば未だマシだという事も理解している。と、為ればだ、貴方が拭き残しを心配するのも道理というもの。だが、安心して欲しい。何故ならば・・・私にとって其れは、ご褒美だからだ!」

その時、プチッと何かの切れる音が聞こえた気がした


ひとの話を聞けええええぇぇぇぇぇ!!!」

ウンディルの絶叫が部屋に木霊し、彼女の白く艶めかしい程に美しい脚が天高く掲げられる

次の瞬間、俺の頭頂部にウンディルの踵が突き刺さった


━━━━━━━━


「は!」

意識を取り戻した俺の目の前には、今となっては見慣れた白い部屋が在った


「夢じゃ・・・なかったんだ・・・」

ふと横を観るとウンディルが憔悴しきった顔で俺を見つめている

彼女は俺が意識を取り戻したのを見ると、此方に近付いて来た



「志多木さん・・・」

「宗篤と呼んでくれ」

「・・・志多木さん、貴方は何故其れ程迄に女性用下着、パンティに拘るのですか?」

「全く・・・何を訳の判らない事を。そんな事、判り切っているだろう?其れが漢の・・・浪漫だからさ!」

ウンディルの問いに俺は親指を立ててドヤ顔で答えた


「フッ」

ウンディルの口元が歪む


「訳が判らないのは・・・お前だあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

白いドレスが捲れ上がり、青い小さいリボンの付いた漆黒のパンティが露わになる

そして、其処から延びる白く艶めかしい脚が横薙ぎに俺の側頭部を打ち据え、俺は又意識を手放した


━━━━━━━━


サラサラと細流の音が聞こえる

そよ風が身体を揺らし

木々の間から差し込む木漏れ日が、俺の意識を覚醒させた


"此処は何処だ?"

俺は朦朧とする意識を無理矢理覚醒させて周囲を見回す

辺りには木が生い茂り、足元には小さな小川が流れていた


"森・・・の中?"

辺りには木々の葉が風にさざめき、鳥の鳴き声も聞こえる

"あれ?確か俺はウンディルの後ろ回し蹴りを頭に受けて・・・"

其処から先の記憶が無い

とりあえず周囲を調べようと、体を動かそうとして俺はその異変に気付く





Σ(;゜ロ゜)え?"な・・・なんじゃこりゃああああァァァァァ!!!!!?????"

視界に入った自分の身体は、人の其れとはかけ離れたモノとなっていた

いや、其れは良い

其れは良いのだが・・・


問題は・・・

俺の身体が二つあった事だ


?(°Д°≡°Д°)?なんだ・・・?"一体何なんだ、此れは?"

余りにも唐突な出来事に混乱しながらも、俺はもう一度自分の身体を確認する

細長く伸びた形状は先細りになっていたが、その先端は軽くカーブしながら少し膨らんでいた

そして、その反対側は袋状になった俺の身体の入り口になっており、俺を履いた時にずり落ち無い様にその口周りにはゴムの様な伸縮性に優れた素材が使われている様だ

其れが二つ、木の枝に引っ掛かった状態でそよ風に揺れている


その姿は、正にニーソ

ニーソックスそのものであった


orz"何故・・・だ?どうしてこんな事になった・・・?"

絶望の余り意識が飛びそうになる


(((;°Д°))))"パンティじゃ、ねえええええええぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!"

何処とも知れぬ異世界の森の中に俺の魂の慟哭が木霊した


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