1.授乳
幼児編1.
話はちょっとだけ遡るが、忘年会で乾杯のビールをノンアルコールと間違えて、本物ビールを社長の慈母種薄に用意してしまった当時の庶務課長であった三須多志に、何故か三ヶ月後に突然の辞令が発令されて、今や取締役秘書室長に出世していた。
そして、妻の絶倫子がネット販売で買った下着のメーカーも何故か何時の間にか慈母書籍の大口出資を受けることになった。
そんなこんなで、慈母夫妻にとってまさに一粒種の愛男は、生後びっくりするくらいの勢いですくすく育っていた。
産婦人科の主治医の話によると、良質な栄養エネルギーを潤沢に蓄えた母体に予定日を45日も過ぎて普通サイズの倍くらいで産まれたので、その生命力は神かかってるせいではないでしょうか。との事だった。
「母子共に最高のコンディション!」と主治医の言に、慈母夫妻は見詰め合ってニンマリした。
しかし、絶倫子にはひとつ不安なことがあった。
普通サイズの倍くらいの胎児を出産予定日を45日も過ぎただけに、出産後のお腹はぷよぷよになっていた。
それと、出産時に裂けてしまったアソコ……。
なにせ、普通サイズの倍くらいだっただけに、元のボディラインに戻れるのかが、絶倫子の不安であった。
種薄は実業家である。
真の実業家は凡人よりも何歩も先を見抜く力があるのだ。妻の不安を種薄は見抜いていた。
下着メーカーに大口出資した理由はひとつ。
妻のスタイルを元に戻すための美容下着の開発を指示する為だったのだ。ムフフフ……。
種薄は絶倫子をこの上なく愛しているのだ。
一方、生後6ヶ月を過ぎた愛男は母のエネルギー満点の母乳を三時間おきにグビグビ飲んでは寝て、起きてはまた飲んでの繰り返しで、夜鳴きなども全くしないで、初めての子育てである絶倫子の手を煩わせたりすることも全くなかった。
絶倫子の、愛男へ注ぐ愛情は海よりも深く空よりも高かった。
三時間おきの授乳のせいか絶倫子の小さかった乳首は、巨峰くらいにデカクなりピンクだったそれも墨汁のように変色していた。
そんなことは絶倫子には、もうどうでも良くなっていた。
種薄が用意した美容下着も最初はお気に入りだったけれど、もうそんなことよりも、絶倫子は愛男の成長のみが唯一の生き甲斐へとなっていた。
「愛男ちゃん。ママでちゅよぉぉお」
「ばぶぅ~ ばぶぅううう~」
高濃度のエナジードリンクに匹敵する母乳を3時間おきに飲んでいる愛男の成長は驚くほど早かった。
「痛っ!」
生後6ヶ月で、愛男の乳歯は生え揃い、すでにハイハイも出来るのだ。授乳の際に時折、その乳歯が絶倫子の巨峰乳首を噛むのであった。
「マァ~ま。マァ~ま。ばぶぅ~ バブバブぅうう~」
「ん!???? アナタぁああ~~ 愛男ちゃんが喋ったあああ!」
種薄は、妻の大きな声に書斎から飛んできた。
「なんだって!? んなわけないじゃろが!」
その時だった。
「ぶぅはぁ~ マァ~ま。ばぶぅ~ ばぶぅううう~」
口に含んでいた巨峰乳首を吐き出して、愛男をまん丸な目を種薄に向けていた。
「天才じゃ! この子は天才じゃ! 絶倫子よ~」
夫妻の喜びは天をも貫くようであった。