第5話 謎
「はぁ……はぁ……間に合って、御影くん……。」
もうどれ位走ったのだろう。喉から血の味がする、それでも止まれない。
待ち合わせ場所に着くと何かドロっとしたものを踏んだ。明かりに照らすとそれは赤い液体だった。血?嫌な予感がして顔をあげると誰かが立っている。顔がわからないので恐る恐る近付くと、そこに立っていたのは椰子緒 御影だった。
足元を照らすとそこには花江 恵美の死体が転がっていた。
その経緯を全て御影くんから聞いた所によると、まずそこの死体になった花江さんは本物で、私に教えられてここへ来たらしい。偽物だ。
朝、花江さんの偽物を使い私を騙してその後に私の偽物を使って花江さんを騙していた。
何か遊ばれてるような気がして凄くイラッとした。
それと御影くんはここに来る途中、2人の死体を見つけたらしい。
朝凪さんとこの夫婦らしい。
妻である志乃さんは首を吊っていた。
旦那の義彦さんは遺書と一緒に死体があったらしい。
遺書の内容は
「わいは偽物に翻弄されるのも殺されるのも御免じゃ。だからわいはわいの意思で死なせてもらう。最後まで己であるために───」
元ヤクザの義彦さんらしい。
ズルズル……。
物音がした方を見ると小夜美さんが何かを引きずっていた。よく見ると光壱さんの死体だ。
「え……それ、どうしたの。」
声を抑えることが出来なかった。
「えへへ、ごめんね。私実は殺人鬼で、今日はこれの片付けがあるから二人の相手はまた今度ね。」
殺人鬼……?あの小夜美さんが。嘘だ。そんなの本当でも信じたくない。信じられないよ。
私はもう心身共にかなり疲れてしまった。
「俺の目的、まだ話してなかったよな。」
御影くんが話してくれた。目的?何のことだろ。
「目的ってのは明日、10月20日定期船が来るらしい。それに乗ってここから出る事。向かう先は004って研究都市らしいが、転々としてるうちにこの都市から逃げ出せるんじゃないか、と思ってる」
だから、ここから一緒に逃げよう。そう言われた。私は喜んで受け入れたが偽物に殺されないようにしないとそう強く誓い、お互い帰宅し眠りにつく。
コツコツ…………。
「え?湖々路ちゃ……」
小夜美 月琉の首が飛ぶ。
「フフフフフフフ。」
そして、向かう先にいたのは椰子緒 御影だった。
「そろそろだと思ってたよ。」
天路 湖々路、彼女は一定のストレスがたまると睡眠中に別人格が動き出す。
両親の死、金沢の死など彼女が抱えたストレスの暴走によって現れた別人格によるものだ。
両親の死の犯人が未だに見つからないのも自覚なき者の殺害、証拠まで完全になくしているようだ。それではバレるはずもない。
別人格というよりは夢遊病に近い。
後、1日だったのに……今日を生き残るのは賭けでもあった。だが、これもあいつの策略ってところか。彼女に過度のストレスを与えこの状況を作り俺がここから出るのを阻止する。合理的だ。
彼女を殺してしまえば確かに済む話ではある。だが、俺もまだ甘い。
目的のためとはいえ意識のない彼女を手にかける事は出来なかった。
───朝目覚めると、外には2人の死体があった。御影くんと小夜美さんの死体。
一体……誰が。
「あなたよ。」
そこには変わった姿の女性がいた。
そして、すべてを説明された。私が夢遊病で人を殺していた事も。それとここはもう研究終了で、すべての機能が停止するらしい。
ただ、だからと言って諦めようとは思わなかった。御影くんを殺してしまった、彼の目的は私が背負う。そんな誓を胸に定期船で004へと向かった。
───研究都市007、研究内容「偽物」研究結果……偽物という存在により人は疑心暗鬼に陥り狂う者、守るために動く者、そして過度のストレスを受ける人間がいる事を確認した。以上で研究を終了する。
プシューッ
そして、私は004に着く。だが、聞いた話の通りもう誰も動いていない。誰もいない様子だ。
少し私が歩いている曲がり角で誰かとぶつかった。
「いったぁー。」
私は「大丈夫ですか?」と手を伸ばす
お尻を払う彼女に質問をする
「あなたは……?」
そうすると彼女は私の方を見て答える
「私?私は宇宮 美緒だよ。」
第2章 「偽物」END