第4話 イロモノ
僕の名前は真加 光壱。21歳。現在僕は小夜美 月琉、彼女に恋をしている。彼女は手首に丸く跡がある、それが気になって聞いても教えてはもらえない。まだ信用しきってもらえていないんだろう。
だから、僕は今回の件で……この偽物事件を利用して彼女を安心させてみせる。
「あ?どこか行くのか?デブ」
この嫌な喋り方の人は真加 早志、僕の兄だ。
「う、うん。ちょっと小夜美さんのとこへ……」
そうすると兄は大きく口を開き笑い出す。不愉快だ。
「あのバカのとこへ行くのか!それは邪魔したな、ハッハッハッ」
この人はいつもこうやって僕をバカにする。僕の大事な人までバカにする、許さない。いつか何らかの形で仕返しをしてやる。
僕はそんなことを胸にしまい家を後にする。
学校とは言っても教師という教師はいない。人が減ると同時に特殊な機械がそれぞれの施設に配備されて、それらが管理をしている。
例えば学校なら教師としての役割をそれが果たす。他にもコンビニの店員、図書館の受付、ファミレスの厨房、ホールさん。
そんなふうに気をつかってくれてはいるけど、人がいない。将来がほぼない様なこの場所で学力なんて最低限あればいいと思う。
だから御影くんとお喋りをして一日を終える。
「それじゃ御影くん!後でね。」
図書館に着く。時間を少し過ぎてしまったが、そこには誰もいない。少し待つ事にした。
30分くらい経ったが未だに花江さんは来ない。
『花江さん、5時から役割の仕事して忙しいもんね。疲れてるだろうし遅れてるのかも。あれ……?』
花江 恵美、彼女が家を出て役割の仕事をするのは5時から、そして天路が家を出たのは起きた時間が7時。少なからずそれ以降、どう考えても可笑しい。じゃあ、あの時あの場にいた彼女は……?
───偽物───
その単語が頭をよぎった。では、偽物の目的は?天路と椰子緒の分断だろう。そしてここに彼女は来ない、ということは狙われているのは……
『御影くんが危ない!』
そして天路は集合場所へ一目散に向かう。
「あぁ……腹減ったな。」
真加 早志はそう呟きコンビニへ向かうため家を出る。
そこには花江 恵美の姿があった。
「おうおう?どうした真面目ちゃんこんなとこで」
「……私、怖い。」
グサッ。胸部に強い痛みと同時に全身に寒気が走った。
血が滲む胸部、血のついたナイフを持つ花江の姿。
「なんの……つもり、だ?お前まさか偽物か。」
力が抜け地面に膝をついてしまう。
「偽物?違うわ。……あなたが偽物なのよ。」
そう言うと花江 恵美は去っていく。
追いかけたいがそんな力が入らない。彼はそこでそのまま倒れてしまった。
そして、同時刻。
「小夜美さん!」
真加 光壱は待ち合わせ場所につく、廃工場。
あまり近づきたい場所じゃないけど星がよく見える穴場でもある。
普段じゃ考えられないほど彼女と長く話している。
そろそろ本題に入ろうと思った手首の跡のこと。
「その……手首の跡の事なんだけど何かあるなら僕でよければ力になりたいんだ。だから教えてくれないかな。」
勇気を出して聞いた。暫しの沈黙の後、彼女が「うん」と言い立ち上がる。その瞬間、彼女が左手を大きく振りかぶった。
頭を殴られたが素手の感触ではない。彼女の拳を見るとメリケンをはめていた。
そして、地面に倒れ込む僕、その上に股がる彼女の手にはトンカチ……。
ねぇ?それをどうする気?やめてよ。小夜美さん。
「光壱さんが知りたいって言ったんですよ?私は数年前、牢屋に入れられていた。殺人鬼……なんですよ。」
ガッ!…………
それ以降、僕の意識はなかった。