第2話 不幸
私、天路 湖々路は平凡だ。運動も並、勉強も並、何もかもが普通。あ、でも一つだけ変わってる事はある。嬉しい事ではないけど私は根っからの不幸体質の様だ、父や母は私に暴力を振っていた。
いわゆるDVだ。けど、それでも幸せだった。だけどある日2人はいなくなった。先にいなくなったのは父、次に母。どちらも何者かに殺されたんだって。未だに犯人は捕まらず、誰かすらわかってない。これってすごく不思議だよね。
私はたまたま帰り道で出会った、2つ上のお姉さんでしっかり者な花江 恵美さんとお話をしていた、会話の内容はとてもシンプル。
今日の学校のこと、定番の噂話、最後はありきたりな恋バナ。
もう何時間くらい立ち話をしたんだろう。そう思った時、16歳で同い年の御影くんがこちらへ走ってきた。
「天路、さっきそっちの道で金沢さんが呼んでたぞ」
金沢 敏明、この街の最年長で32歳。行事などは彼がよく行う。けど、最近は街の人も減り行事はなくなった。まぁ、当然だと思う。昔は今の倍以上は人がいたはずなのだから。
とりあえず私は「わかった」と返事をしてその場を後にする。
「待ってください、あの時の小夜美さん」
そこにいるのは小夜美 月琉ではなく花江 恵美だ。だが、そう呼ばれると同時に花江 恵美の態度は変わる。
「なんだ、バレていたのか。やはりあんたはやりにくい。じゃあ、私は消えさせてもらうよ。」
右手を振りその場を去ろうとすると止められた。
「取り引き……しませんか?」
椰子緒 御影の提示してきた取り引きは私の目的を教える代わりに私の指示に一つだけ従うというものだ。
好都合ではあった、こいつが偽物の存在を明かせばこのまま実験は開始する。もうそれなりに偽物での遊びは済んだ。それにこいつしか私を偽物だと気付けなかった。
そう思い、取り引きを成立させた。
金沢 敏明宅。
コンコン……「こんにちはー。」
そう言うと、金沢さんが出迎えてくれた。色んな話をしたが、もう遅い時間だった。これが最後だ、と彼が最後の話を始める。
「私は人形集めの趣味があってね。それもただの人形ではないよ。ちょっと来てくれるかい?」
そう言われ付いて行くと少し寒い部屋へと案内された。たくさんのドアがあり何かが入ってるらしい。その一つを開けるとそこには父がいた。
遺体の父が冷凍保存されていたのだ。ここは死体の保管所なの?けど、さっき彼は人形、と言っていた。どういうこと。
「私はね、死体を冷凍保存して眺めるのが趣味なんだよ。だがね、死体だからどれも傷物でね……そんな時ふと思ったんだ。生きた人をそのまま冷凍保存したらそれはすごく美しいのではないか、とね」
何を言っているんだ。この人は。私は咄嗟にそこを逃げ出した。
そこで御影にぶつかった。
「はぁ…はぁ…み、御影!金沢さんが!金沢さんが!お父さんを!お父……」
言葉を切られる。
「落ち着け。とりあえず今日は1回家に帰って寝な。明日話は聞くよ。」
御影はそう言って立ち去ってしまった。
もう真っ暗だ。それにあんな事があって少し怖い。私は早足で家に帰り眠りにつく。
ピンポーン、「湖々路ちゃーん」
金沢 敏明が来た。私はもう眠っている。これで終わってしまうのだろうか。
───次の日、天路家最寄りのごみ捨て場に金沢 敏明の死体が発見された。