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陸でなし  作者: 彩丸
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 祭りの翌日、志保さんと理恵が死んだ。

 寝ている間に誰かに殺されたらしい。顔には何度も殴られた様な痣ができ、口内は切れ、鼻は拉げ、そして首を両手で強く締められた様な跡が有ったらしい。

 問題なのは、誰かがやったという事実。

 散々悲鳴を上げ、家族全員が駆け付け。まるで透明人間が馬乗りになっているかの様に、志保さんも理恵もひとりでに傷付いていったのだという。家族がそれを止めようとしても、そこに居る何かには触れられず。娘を幾ら引っ張ってもその場から一向に動かせなかったのだという。

 そして数十分にも及ぶ暴行を加えられた後、首が窪んでいき、窒息するよりも先に暴力的な死を迎えたのだという。

 

 俺は自分のしてしまった事に耐え切れず。結局二人の葬式にも墓前にも顔を出さないままに逃亡した。部屋を閉め切って、鳴り止まないスマホを無視して、ひたすらパソコンに向かった。

この事実を、事の顛末を書き残さなければならないという衝動に駆られ。テキストファイルに書き殴ってデスクトップに保存し、それからネットのオカルト系のサイトに投稿しまくった。誰かが助けてくれる様な気がして、顔も知らない誰かに縋り続けた。

あの日の夜から、あの二人がよく夢に出るようになった。真っ暗な空間に二人は並んで立っていて、LINEで聞かされた様に徐々に痣が増えていき、そして首が折れて。それでも二人は無表情のままにじっと俺を見続けていて。いつの間にか二人の間くらいに一本の絞首縄が現れる。それと同時に二人は何かを言おうと口をぱくぱくさせるのだが、声は一切出ていない。それが何秒か経つと、ぶつ切りに夢から覚める。


もう、長い事耐え続けてきた。意識を失うまで起き続けて、意識を落とす少し前に睡眠薬を服用する日々を続けた。それであの夢を見ないで済む事を知った。それでも時々薬を飲み損ねて、うなされる事も有った。

そんな日々を繰り返してきた所為でまともに就活も出来ず、派遣の道を選んだ。多分その辺りから既に確信していたのだと思う。

生きること自体、幸福を求めること自体が烏滸がましいのだと。

体も随分とボロボロになってきた。


 明日、死のうと思う。

 首を吊る為の縄はもう用意してある。


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