本能寺の変 裏話
本能寺の変 裏話。
天正十年、二月のある日。
織田信長は確実に天下統一を成し遂げようとしていた。
しかし、家臣の中には不満を持つ者も多かった。
急な改革に反発は付き物だ。それでも、信長は気にしていなかった。
あの方と拙の伝えた情報おかげで拾った命だというのに。
「うつけめ。最近は少々度が過ぎておる」
「兄上に任せておいてはダメなのでしょうか」
そのことを不安に思う二人の女性。
「だが、あやつが死ねば乱世に逆戻りじゃ」
「残念ですが、彼が天下を取ることは不可能です」
拙は集めた情報を元に、結論を出した。
「説明せい」
「信貴山城の戦いで自害したといわれる松永久秀が、百地の残党や雑賀衆、織田領内の反信長勢力などと手を組み、打倒信長のために動いております。我らの力をもってしても殲滅には数年の時がかかるかと」
「対策はないのか」
「殺すのです」
「妾たちに、うつけを殺せと?」
「……そうではありません。織田信長としての彼を殺すだけです」
織田信長ではない。ただ一人の人として生きるために。
「わかった」
「やりましょう」
二人が同時に結論を出した。
「うつけはうつけじゃからの」
「兄には生きててもらいたい。たとえ天下人じゃなくても」
「では、行動を開始しましょう」
それからの行動は早かった。協力者を選び、声をかける。協力者が決まれば、それ以外の者への対処法を考える。すべてが決まり、決行日が決定したのはそれから約三か月後のことだった。
明智光秀のもとに、一人の女が訪れていた。
「これはこれは、どうなさいましたか」
「伝言を届けに参りました」
「それはそれは、わざわざ申し訳ない」
「実はですねーー」
羽柴秀吉のもとに、一通の手紙が届いた。
「向こうは順調みたいじゃの」
「なにかあったのですか?」
「お、おう。まあのぅ」
「……」
その後。
秀吉は津田宗及と密会したとか、しないとか。
池田恒興のもとに、一通の手紙が届いた。
「拙者の迷いもお見通しとは……」
柴田勝家のもとに、一通の手紙が届いた。
「儂らも準備をしなければの」
「準備ですか?」
「魚津城を一気に攻め落とす」
「は!」
織田信長のもとに、一通の手紙が届いた。
「ついに、この時が来たか……」
「いかがなされたのですか?」
「京都へ向かう準備をするぞ」
「かしこまりました」
かくして、本能寺の変へ向けて、皆動き出すのであった。
真の黒幕とは。