武田奮闘記
時代は大きく進みます。
長篠での戦いは大敗に終わった。
拙者にとって、それは由々しき事態を招いた。
我が父、信玄公のころから仕えていた武将たちの戦死。
家中の乱れ。
しかし、まだあきらめるわけにはいかない。ここから挽回していかなければ……。
「殿! 緊急事態です!」
「何があった」
「上杉謙信様が死去なされました」
「な、なんだと……」
それでは、上杉との関係が……。
「それで、後継者は?」
「現在、決まってはいないようです」
困ったことになったな……。
その後。上杉家では、景虎と景勝による後継者争いが勃発。
同盟関係にあった北条家は、景虎の支援を要求してきた。
「いかがなさいますか。殿」
「答えないわけはいかぬが……」
上下とも北条派になるのも困るしな……。
「いかがなさいますか。殿」
「両者を和睦させよう」
「かしこまりました」
しかし、この選択は間違いだった。
両者の和睦のために景勝勢力に近づいたのだが、結果として支援したに等しい状況になってしまった。
「殿! 上杉景虎様がお亡くなりになられました」
「……そうか……」
これで、北条との関係は……困ったことに……。
「それから、景勝様が正式に同盟を結びたいと」
「受け入れよ」
「かしこまりました」
そして、事態はさらに悪化する。
「殿! ご報告が」
「申せ」
「北条様が徳川様と同盟を結びました」
「そうか……」
まさか、徳川と……。
北の上杉は、疲弊して戦力ならないし。
「佐竹と同盟を結ぼう」
「かしこまりました」
しかし、状況を打開することはできずにいた……そんな時。
「殿! 至急」
「申されよ」
「高天神城から援軍要請が」
「援軍は出せぬ。降伏するように伝えよ」
「こ、降伏ですか?」
「見殺しにしたとなっては、さらに状況が悪くなる」
「か、かしこまりました」
厳しいな……。
しかし、高天神城は降伏せずに落城。
拙者の力ではもう……いや、まだだ。
「韮山に新たに城を建てよ」
そして数年後。木曽の裏切りにより、事態は大きく動いた。
織田、徳川、北条による三方向からの侵攻。
浅間山の噴火。
前線の拠点の無抵抗の降伏。
「殿! 受け入れ先が見つかりました」
「どこじゃ」
「小山田様のところです」
「よし、今すぐ行くぞ」
はやく態勢を整えなければ……。
「緊急! 上様に報告が」
「なんじゃ」
「小山田様が受け入れ拒否と」
「なんじゃと!」
「このままいくのは危険かと」
「く、引くぞ」
逃げ道がなくなったか……。
どこへ行くか。
「殿! 敵の追手がすぐそこまで!!」
戻ることもできぬか……かくなる上は。
「天目山へ向かう」
「かしこまりました」
しかし、拙者は天目山につくことはできなかった。
武田勝頼。彼は色々頑張っていたようだが、武田家は滅亡した。
まあ、高天神城とか小山田さんとか、滅亡させるために拙も頑張ったからな。
任務完了。報告してきますかね。
織田信長のもとにも、武田家滅亡の報が届いた。
「武田が滅んだか」
「これで徳川は用済みね」
「そう怖いことを申すでない」
「いっそ消してしまわない?」
「滅多なことを言うでない」
「お堅いのね、あなた」
今回はすこし違う雰囲気で進みました。