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女将軍  作者: 孫朴 歩啓
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桶狭間の戦い 後編

桶狭間の戦い完結。

 偵察隊の報告を聞いて、今川軍は大いに動揺していた。

 気づかない間に、織田(おだ)軍が川の中州にあった砦まで本隊を進めていたようである。

「すぐに、あの砦に五千の兵を送り込むのじゃ」

 だが、海道一の弓取りと言われるだけのことはある。義元はすぐに新たな命を下す。

「かしこまりました」

「気でも狂ったのかのぅ」




「これでどうかは、雪斎(せっさい)?」

 しばらく、何かを考え込んでいる様子の義元だったが、急に顔を上げあたりを見渡す。

 誰もいないことを確認すると、再び俯いた。

 そこに伝令が駆け込んでくる。

大高(おおだか)城が落ちました」

「よし、ならば本陣をそこまで進めようぞ」

 勝利の報告に、義元は元気を取り戻して進軍を決定した。


 今川軍が桶狭間(おけはざま)山まで到着し休息を取っていると、急に鬨の声が響いた。

「なにごとじゃ!」

「織田の軍が攻めてまいりました」

 義元の叫びに返事をする。

「なんじゃと!」

織田(おだ)軍です! お逃げください!」

「現在、本陣の守備兵たちが戦っております!」

 二人の兵がほぼ同時にやってきて、義元へと報告する。

「いったいいつの間に……」

 と、義元は何かに気付いて兵に問いかける。

「五千の兵は、どこから川の砦に向かったのじゃ」

「小高い丘を通っていきました」

「つまり、織田は谷側か。山の上からだと死角じゃったか……」

 後悔の色を見せる義元だが、部下たちには毅然とした態度で声をかける。

「数は、敵の数はいかほどか」

「数はわかりませぬ」

「その数およそ三千」

 二人が同時に答える。

「三千程度ならば、防ぎきれるじゃろ」

 義元には片方の返事しか聞こえていないようだった。


「報告!」

 義元が戦支度をしていると、伝令兵が勢いよく飛び込んできた。

「申してみよ」

「そ、それが……逃亡兵多数。こちらの陣が乱れております」

「逃亡兵じゃと? どういうことじゃ」

「最初は、数十名でしたが、つられるようにして……」

「なんーー」

「報告!」

「なんじゃ!」

「お逃げください! 敵がすぐそこまで!」

 まもなく、義元は討ち取られた。


「約束は果たせぬようじゃ。すまぬ、雪斎」

 義元は最後にそう言い残した。

 この場に今川軍にとって軍師であった太原雪斎(たいげんせっさい)がいれば、状況は変わっていたのだろうか。


 と、今は今川に勝利したことを報告するのが最優先事項だ。

 連絡鳥の足に文を縛り付け、空に放す。あの方の元まで飛んでいけ。

次回、裏話。

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