秀吉の天下統一事業
豊臣(羽柴)秀吉が、本能寺の変の後の人生を振り返ります。
本能寺の変の後、ワシの行動は早かった。
清州城にて、後継者と領土の再分配を決定する会議が行われた。
集まったのは、ワシを含め四人。
柴田勝家殿
丹羽長秀殿
池田恒興殿
滝川一益殿は、先の関東での失態によりおかえり願った。
といっても、予め決まっていたことを確認したまでじゃが。
しかし翌年。柴田殿が反旗を翻した。
ワシは、これを賤ヶ岳で破った。
お市の方様を救えなかったことが、心残りじゃったが……。
その後。ワシはある方の進言により大阪に城を建てた。
さらに翌年。
織田信雄殿と徳川家康殿と戦い、勝利。
一年かかったのは想定外じゃったが、さすがは徳川殿といったところか。
そして数年をかけ、
四国の長宗我部、九州の島津、関東の北条を制圧。
さらに、奥州の伊達が降伏。他の従わぬ大名たちも力でねじ伏せ。
天正一八年(一五九〇年)。ワシは天下統一を果たした。
ここまで、皆に助けられてきたのぅ。
皆に感謝を伝えなければのぅ。
「官兵衛。おぬしには世話になったのぅ」
「ありがたきお言葉」
「ワシに何かあったら、豊臣家を守ってくれ」
「わかりました」
「おね。迷惑をかけたのぅ」
「妾はあなた様と夫婦になれて、幸せでしたよ」
「そうか……そうじゃのぅ」
「三成。そちには苦労ばかりかけたのぅ」
「それが、仕事ですから」
「これからも、豊臣家を頼む」
「御意」
「徳川殿。頼りにしてますぞ」
「この命尽きるまで、豊臣家に仕えましょう」
「頼もしいのぅ」
「利休。おぬしにも世話になったのぅ」
「こちらこそ、信長公を討ったのち、あなた様にはお世話になりました」
「利休?」
「おっと、年を取ると口が軽くなって仕方ない」
「……そうじゃのぅ」
次の目的地は……明? なるほど、それはよいのぅ。偵察? そんなことなぞせんでも、容易く落ちよう。ワシは天下人じゃぞ。もう、サルではないのじゃ。
しかし、一度目の遠征は失敗。
ワシは間違ってなぞおらぬ。部下たちが使えなかったのじゃ。
敗軍の将たちを処分し、二度目の遠征を決行。
じゃが、結果が出るよりも先にワシの寿命が尽きそうじゃ……。ワシの判断は間違っておったのかのぉ。あの時、……の……。
皆、秀頼をワシの……いや、豊臣の子を頼む、ぞ……。
信長の死後。協力するはずだったのに、お互いに争い合って天下を取ったのは秀吉。その過程であの方を死なせてしまうとは、拙の考えが甘かったことを痛感させられた。
今、拙はあの方の最後の願いに従って、あの方の長女に付き従っている。秀吉の側室だが、あの方の娘だ。私情を捨てて仕えよう。今はただ。
次回。秀吉の死後、天下はどうなるか。