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まず遅くなってすいません。
今回の話は淡々と進むので、盛り上がりに欠けますが生暖かく見守ってください。
「チェンジ?何を「お姉ちゃんやめてください!!」」
お姉さんが口を開こうとすると、アリスが抗議する。
「レンさんは、私が森でゴブリンに襲われていたのを助けてくれたんだよ!!レンさんに失礼なこと言わないで!!レンさんが変なことするわけがない!!」
・・・心にナイフが刺さるぜ・・・手をつないだだけだからセーフだよな??
「ゴブリン!?アリスは大丈夫なのかい?・・・あんた、レンって言ったね・・・悪かった。アリスが心配で取り乱した・・・」
「いえ、家族を思う人の気持もわかりますので・・・気にしないでください」
アリスの言で少し落ち着いたお姉さんはすぐに謝ってきた。
なかなか素直でいいお姉さんである。
「で・・・チェンジってなんだい?」
「焦った事で・・・聞き間違いされたのでは?」
俺は極めて冷静に、全力でごまかすことにした。
「いや、あんたは「今更ですが、改めまして御剣レンと申します。16歳で旅をしています。アリスとは、旅の途中でゴブリンに襲われている所を助けたことで出会いました。僕も道に迷っていたので助かりました。」」
「あ・・・私は、マリアだよ。アリスの姉だ。16歳だからあんたと同い年で、冒険者をしている。アリスを助けてくれてありがとう・・・でチェンジって何?」
誤魔化せなかった。
「アリスの前ではちょっといえません。もし、今度会うことがあればお答えしますよ」
「なんでだよ・・・何か「やめなさい」」
それでも反論しようとするマリアの言葉に、家の中から待ったの声がかかった。
声がして少しすると、家の中から色白の美人が寝間着のような薄着で、それでいて下品にはならない服装でゆっくりと歩いてくる。
「マリア・・・アリスを助けていただいた方に失礼な事をいうことは許しません。・・・レンさん、私はこの子たちの母、イリスと申します。娘が失礼いたしました。少し病気で寝込んでおりましたので、こんなはしたない格好ですみません。大したことは出来ませんが、もしよろしければ、本日うちにお泊りいただけませんか?お礼をさせていただきたいのです」
「あ、いえ・・・さすがに皆さん体調を崩されているようですし、遠慮させていただきます」
どうしたら、イリスさんのような美人からマリアが生まれたか疑問に思いながらも、失礼にならないように断ることにする。
「いえ・・・娘を助けて頂いて、そのままお帰り頂いては恥ずかしくて外に顔が向けられません。どうか、一日だけでもお泊まりください」
「レンさん・・・アリスもお礼していです。お母さんは体調が悪いから寝かせるので、私がレンさんにおもてなしします。だから今日だけでもお願いです」
目をキラキラさせながらアリスが言う。
そんな目で俺を見ないでくれ・・・
「・・・では、今日だけ失礼させていただきます。できることは手伝いますので言ってください」
そうして俺はこの家庭に一泊させてもらうこととなった。
家に入るときに、マリアが小さな声で
「夜にチェンジの意味聞かせてもらうからね」
と睨みつけてきた。
なかに案内され、客間を1室宛てがってもらえたが、まだ夕方である。
出かけるには遅いし、やることもない為どうするかと考えたところで、アリスを助けた時に木彫をやりかけで袋に放り込んでいた事を思い出す。
「よし。続きをやるか」
そう言って、袋からナイフと木片を取り出す。
「うわ・・・携行食にナイフが刺さってグチャグチャだ・・・明日片付けよう・・・」
袋の中は、ナイフを無操作に放り込んだ事で、携行食を潰しグチャグチャになっていたのだ。
「~~~~~♪~~~~~♪」
それをみて諦めた表情になるも、考えても仕方ないと床に座り込み、睡眠不足で頭が痛くなる天才発明家の歌を鼻歌で口ずさみ木彫を進めていく。
「・・・ンさ~ん・・・レンさん」
「うぉっ」
どのくらい時間が経っただろうか、木彫が完成したところで、後ろからアリスが声をかけてきたが、近づいてきていたことに気付かなかった為、情けない声が出てしまった。
「大丈夫ですか?レンさん晩御飯が出来ましたので呼びにきました」
「大丈夫・・・呼びに来てくれてありがとう」
そう言ってアリスの後ろをついて台所まで行く。
台所に入ると、マリアがすでに着席しており、その横にアリスが座った。
「イリスさんはやっぱり起きてこれないのかな?」
「はい・・・お母さんはまだ寝ているので、食事は後からアリスが届けてきます」
それを聞いて、アリスの対面に料理が用意されているのは自分の席だと判断し席につく。
今日の献立は、パンと野菜のスープ、干し肉だった。
「ウマそうだな・・・アリスが作ったのか?」
「はい、今日はレンさんもいるので少し気合を入れちゃいました・・・食べてください」
レンが尋ねると、アリスは少し照れたような表情を見せ、薦めてくる。
「頂きます」
レンはいつも通り手を合わせ、食事の前の礼を払い食べだす。
「美味い」
正直舐めていた。昔読んだ異世界へ行く話などでよく語られるように塩の味しかしないスープや、食えたもんじゃないパンを予想していた。しかし、パンは少し固いが味は上々、スープに至っては味自体は塩と干し肉だが、野菜の旨味が出て非常に美味しかった。
「はっ、そりゃアリスがいつも以上に張り切って、普段使わないような高級品を使っていたから美味しいに決まってる。まずいなんて言ったら叩きだしてやる」
「お姉ちゃん!!ばらさないでよぉ・・・」
マリアは未だレンの事が気に入らないのか、少し刺のある言い方だった。
しかし、レンの心よりアリスの胸を深くえぐった。
レンは少し苦笑いを浮かべるも、ドンドン食べ進め完食する。
「あー美味しかった・・・こんな美味しいごはんを作ってくれたお礼に、アリスにはこれを上げよう」
そう言ってレンはポケットから先ほど作った木彫のペンダントを差し出す。
ペンダントは、天使をレリーフにしたような出来で、細部まで丁寧に彫り上げてあり、とてもゴブリンの棍棒から出来たとは思えない出来である。
「・・・これは?貰ってもいいのですか?」
「あぁ・・・昼間襲ってきたゴブリンの棍棒削って作っただけだから良かったら貰ってほしい」
「手作りなのですか?」
これにはアリスもマリアも絶句していた。
レンは知らないが、この世界では常に魔物や野獣、犯罪者から身を守る必要が有るため、武器の製造は発達しているが、アクセサリー等に関しては貴族向けに型に金属を流し込むタイプの物が多く、木彫のアクセサリーは採算が取れないため高級になる傾向があった。
「あぁ・・・俺そういうの作るの好きなんだ。手作りで申し訳ないけど、よかったらつけてくれ」
「・・・はい・・・大事にします」
そうして、食事を終えたレンたちは後片付けを手伝った後、部屋へ戻る。
部屋に戻り少しすると、アリスが訪ねてきた。
「レンさん・・・少しお話しませんか?」
「あぁ・・・でも夜に女の子が男の部屋へ一人で来るのは危ない・・・少ししたら帰るんだぞ?」
追い返そうとすると、目をうるませ見てくるので少しだけ許可した」
「じゃあ、レンさんの旅の話が聞きたいです」
「旅の話かぁ・・・」
旅なんてしてないんだよなぁ・・・
そんななにを話そうか悩んでいると、部屋のドアが勢いよく開く。
「さぁ、昼間の続き聞かせてもらおうか」
・・・ナイスタイミング
レンは心のなかで親指をたててサムズアップしつつどうやって乗り切ろうか、新しい悩みで冷や汗をかくのだった。