9
本日2話めになります。
仕事が早く終わってテンションが高ぶりすぎたんです。
指定された魔具店に到着したレンは、そのドアを開けた。
「いらっしゃい」
すると中から声が掛かる。
部屋の中は、奥がカウンターになっており、雑貨屋のような作りだ。カウンターには、格闘家と見間違ってもおかしくないガタイのいいおっさんが座っていた。
「すいません。冒険者ギルドの依頼出来ましたレンと申します。若輩者ですがどうかよろしくお願いします」
「あぁ・・・よろしく頼む。俺は店主のホルトってもんだ、今日は倉庫の整理を頼みたい」
レンが仕事モードに切り替わり、挨拶をすると、ホルトと名乗る男はそのガタイからは想像できない柔らかな笑みを浮かべ、今日の依頼内容を告げる。
「了解しました。では倉庫に案内願います」
「おう、こっちだ。ついてこい」
そう言って、カウンターに不在の立て札をし、奥に歩いて行くため、レンもついていく。
「ここが倉庫だ。作った順番に適当に入れたもんだからどこに何が有るかわからない。同じ物どおしを箱ごとにまとめておいてくれ。俺はカウンターにいるから終わったら声を掛けてほしい」
「承知いたしました」
レンの返事を聞くと、男は店内に戻っていった。
「よし・・・まずは物品ごとに箱を揃えて・・・次に各物品の個数チェック・・・最後に書く箱の上に物品を一個置いてわかるようにしておこう」
レンは仕事の順序をつぶやくと作業に取り掛かった。
2時間ぐらい経っただろうか・・・はじめはものがグチャグチャだった倉庫が綺麗になり、取りやすい配置に変わっていた。
「後は、紙が必要だな・・・」
そう言うとレンは、カウンターのホルトに声を掛け、紙とペンを借りる。
そうして更に一時間ほどで、個数確認まで完了し、もう一度店内へ向かう。
「ホルトさん、倉庫整理完了いたしました。確認願えますか?」
「お、おう・・・はえぇな。すぐ行く」
そう言ってレンは倉庫に戻る。
すぐ後にホルトも倉庫にやってきた。
「各箱の上に、中にはいってる物品が載っています。物の名前がわからなかったので、箱に番号を書き、その番号ごといくつ有るかこの紙にまとめてあります。動作の確認は、使い方がわからないので出来ていません」
レンは自分の仕事の内容を完結に説明し、個数が書かれた紙を渡す。
「はぁ~・・・お前さんすごいな・・・どうも俺はガサツで行けねぇ・・・魔具作りは得意なんだがなぁ~・・・これなら報酬に色をつけよう。カウンターに来てくれ」
そう言って、ホルトは店内に戻っていった。
余談だが、平成日本の管理能力はこの世界の比ではない。ビス一本の数まで半期に一回は棚卸しするなどこの世界では考えられず、大体の個数を把握しているのでも、そこそこの規模の商会ぐらいである。
だが、小さな町工場で、1円の経費を浮かすため日々考えて仕事をしていたレンからすればこれでも甘いといえる。
「おら、これが完了証明だ。作業時間は往復込みで4時間で書いてある。後、あそこまで綺麗にしてもらったのに、普通の人間の2/3の時間で終わってやがる。銀貨一枚追加で報酬を出させてもらう」
そういってホルトは完了証明と、銀貨一枚を手渡してくる。
「いえ、ホルトさん私は自分の仕事をこなしたまでです。決められた報酬以外はいただけません。しかし、もし何か別に報酬をいただけるのであれば、私に魔具制作を教えていただけないでしょうか?」
レンは完了証明だけ、受け取り銀貨は受け取らなかった。
レンは生前からものづくりが好きで町工場で働いていたのだ、なんとか基礎だけでも習い、自分の工房を持ちたかった。
「いや・・・でもお前それは・・・」
「ホルトさん。魔具作りの基礎だけでも構いません。もし教えていただけるのなら、明日から5日間昼間は無償でこちらの手伝いをします。それで基礎だけでも教えてもらえませんか?私はいつか自分の工房を持つのが夢なんです」
そう言うとホルトは少し考える素振りを見せ、数瞬後口を開く。
「分かった。仕事の報酬はちゃんと出すが、昼間はここで店番や雑用をしてもらう。その代わり夕方店を閉めた後、俺が魔具を作るときに教えてやろう。報酬はうちの下働きが入ったときように考えていた1日銅貨15枚だ。それでいいか?」
「・・・よろしいのですか?私は雑用を無償でしても構いませんよ?」
ホルトの口から出てきた言葉は、予想外の好待遇だった。
普通職人は自分の技術を簡単には教えたりしないのだ。
「あぁ・・・正直基礎は、教える自体簡単だ。だが、その先は自分で試行錯誤するしか無い。それに、俺は労働には対価で答えるのは当然だと思う。少しの間かも知れないがお前は俺の弟子になるんだろう?ならその他以下は払うのが当然だからな。だが、いろいろ準備も有る。今日のところは帰って、明日から開始にさせてくれ。明日の開店は朝9時だから八時半には店に来て掃除をしてもらうからよろしく頼む」
そう言って、ホルトはやはり銀貨を差し出してきた。
これを受け取らないのは、相手の誇りをないがしろにすると思い受け取ることにした。
「承知しました。親方、明日からよろしくお願いします」
「親方か・・・いい響だ。明日は遅刻しないよう早く帰って寝るんだぞ」
「はい。では失礼します」
そういってレンは店を出る。
とても気持ちのいい店主だった。
レンは店を出たところで、もう一度店に向けて礼をし、ギルドに帰るべく歩き出す。
しばらく歩きギルドにつくと、すぐにカウンターに向かう。
まだ、昼過ぎということも有りギルドは空いていたため待たずにレンの順番が来る。
「Fランク冒険者のレンです。依頼の達成報告に来ました。これが完了証明です」
「はい、承知しました。すぐ手続きしますので、少々お待ちください。・・・はいこれで完了です。4時間で銀貨1枚と銅貨2枚になります。お確かめください」
受付嬢は完了証明を受け取るとすぐに書類を作成し、報酬を渡してきた。
「ありがとう、後すみません・・・この辺りで安くていい宿ってありませんかね?まだ宿をとってなくて・・・」
そう、レンは昨日アリスの家に泊まり、そのままギルドで仕事を受けたため、宿を取っていないのである。
「そうですね・・・ギルドの3軒右の建物が冒険者がよく使われますね。部屋数も多いので多分まだ泊まれると思いますよ。宿の名前は、虎風亭です」
そう言って、受付嬢は笑顔で対応してくれた。
「ありがとうございます。では行ってみます」
レンは、お礼を言った後ギルドを出て宿に向かおうとするが、後ろから呼び止められる。
「レン。今日の仕事はどうだったんだい?」
「マリアか・・・今日の魔具店の店主すごく気持ちのいい人だったぞ。追加報酬まで貰っちまった」
後ろを振り返ると、ニカッと笑うマリアだった。
「そうかいそうかい、ところで明日はどうするつもりなんだ?・・・もしよかったら・・・その・・・」
「ん?明日か?明日からしばらくそこの魔具店で、魔具制作を教えてもらう代わりに雑用することにしたんだ。いつかは自分の工房を持ってやる」
「そうかい・・・なら、またな・・・」
マリアはいつもの勢いがなく、ゴニョゴニョと何かを言っていたが、聞き取れた範囲でレンが答えると、ショボーンとした顔になり、去っていこうとする。
「ちょっと待てマリア・・・今時間ないか?俺まだこの街の地図がわからないんだ。もし良かったら、買い物付き合ってくれないか?」
「・・・あぁ、任せときな。取り敢えず、商店が集まってるとこに行こうか。ついてきな」
レンが呼び止め、お願いをすると、一転いつもの笑顔に戻り街を歩き出す。
レンは、正直マリアが自分に向けているであろう好意には気づいていた。少しじらして、反応を楽しみたかったのだ。
因みに、マリアがレンに向けている感情はこの時まだ、恋心ではない。
妹を助けてもらったが、ひどいことを言ってしまったことに贖罪がしたいだけなのだ。
レン盛大に勘違い乙である。
レンをハーレムくんにはしたくありません。
レンはずっと童貞でいてほしいから。笑
レンは魔具作りを始めますが、すぐに趣味に走っていきます。




