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ごめんねとありがとう

作者: みるちる

初投稿です。右も左もわかりませんが頑張ってみます!

可愛い薄桃色のほっぺを弾ませながら、きらきらと目を輝かせて、小さな手をちょこんと出してくる少年。その手には千円が窮屈そうに折り曲げられ、大事そうに持たれていた。


「こんにちは!!」


息を弾ませると人懐っこい笑顔で私に語りかけてくる。


「これね、このおもちゃ、ください!」


お話したくてうずうずしたような、悪戯っぽい笑顔で。


わたしは答えるように、静かめの声でおどろかさないよう「いらっしゃいませ」と言った。


頻繁に開閉される扉から流れてくる風は、柔らかい陽を孕んでいて暖かいが、少しだけ勢いが強く思われた。


自分に出来る限りの速さで会計処理をし、品物を差し出しておつりを渡す。小さな手が小銭をこぼさないように左手を添えて、ゆっくり渡してあげると「ありがとう!」といって少年は帰っていった。


その間、私は笑うことが出来なかった。


顔が固定されたように無表情になり、笑顔がどこかへ旅を始めてしまったようである。





原因は分かっていた。



引っ越してきてからというもの良いことがなく落ち込んでる上に、行動がのろいといつも怒られているのだ。

少年が来たこの日、私はフライヤー清掃を任され時間を1時間内に済ませようと頑張っていた。それが無理でも10分は縮めたい。なのに、電気の点検でブレーカーがおとされて途中真っ暗になるし、油が切れてしまったし、交換しなきゃいけなくて・・・・。それでも10分いつもより縮めたのである。


しかし1時間20分かかってしまい、怒られてしまったのだ。

頑張っているところは褒めない。やって当たり前。怒ることはする。

これじゃあ人は伸びないと思った。



頑張ってるところは褒めて尚且つ成長を促さなくては。



悶々と振り返って、私って使えないよなぁと落ち込んでいたら、さっきの少年がやってきてまた私のレジに並んでくれたのだ。


「また来ちゃった!」


照れくさそうに笑いながらおもちゃのケースを差し出してくると、好奇心の塊のような大きな瞳で私を覗き込んできた。


「いらっしゃいませ」


だけど私は笑えない。こんな使えない人間が笑ったって誰も喜ばないし腹が立つだけだ。


「からあげもください!」


少年は、はにかむ。



「かしこまりました」


我ながら何て固い接客だと思った。

私が笑わないで作業していると少年の顔がだんだん悲しげに歪んできて、最後には少年まで無表情になった。


「ありがとうございました、またお越しくださいませ」


お決まりの挨拶を終えると、私はハッとした。とぼとぼと肩を落としうな垂れている少年を見たからである。

だがこんな私の笑顔など・・・・それに旅行に出てるし表情筋は。



でも見たかったのかな?

しゃべりたかったのかな?


もしかしたら初めてのお使いだったのかもしれない。


だとしたらあの子の記憶に一生残ってしまうかもしれない。



なんてことをしてしまったんだろう。



私は悲しくなった。なんていうか泣きそうだ。


これじゃ、八つ当たりじゃないか。あの子の記憶にトラウマつけたかもしれない。



笑っていたら・・・・未来はどうなっていたんだろう?

そんなこと考えた。

きっと私の心にも暖かな何かを灯してくれたかもしれない。


今度来たらあの少年にとっておきの笑顔をおくろう。こんな私笑顔でも見たがってくれるなら。

そのころには笑顔も旅から戻ってきているだろうから。


ラストがハッピーなら良かったなぁと思います。

朗らかに仕上がりました。

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