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東の蝶  作者: 明夢 優深
奴隷と色子
33/33

始まる二人

河原近くを自転車で行く。天気が良くて、良い昼寝日和だろうなあと思いながら、草むらに咲く花々を見ていたら。

「…ええ…」いた。昼寝している人が。なんとなく気になって、自転車を止め、河原に下りる。草むらに寝転がっている人物を見ると、女の子だった。セーラー服を着ているということは中高生だろうか。ここら辺では見たことないな、と思いながら近くに座り込む。首元で切り揃えられた黒髪に、背はそんなに高くないようで、時々寝返りをうとうとしている。健やかな寝息が聞こえるということは、結構ガッツリ寝ているようだった。

「…こんなところで寝てると風邪ひくよー」と、見ず知らずの少女に声をかける。普段ならシカトをして自転車で走り去るところだけど、なんだか、気になってしまっている。なんでだろう、別に好みってわけじゃないんだけどな。そんな事を思いながら少女の寝顔を見つめ続けた。と、冷たい風が吹いた。一つ身震いし、さみぃなんて呟いた。少女も小さく震えて、んんと小さく呻いた。

「んあ…?」目が覚めたらしい。こちらをぼーっと見つめる。黒目がちな瞳に俺が映り込んでいるんだろうな、とよくわからないことを考えていた。

「あれ!?」少女はガバッと起き上がり、「だ、誰ですか?」と聞いてくる。

「おはよう。俺は玉江(とうのえ)東。君は?」「あ、えっと…松江蝶子、です」

蝶子と名乗った少女は、少し恥ずかしそうにもじもじとし始めた。「あ、あの…いつからここに?」「ん?さっき。あ、変なことはしてないからね?こんなところで寝てたら危ないよ」蝶子ちゃんは「すみません…」と委縮した様子だった。これはまずい、となんとなく思って、話題を逸らした。

「えっと、蝶子ちゃんでいいかな。ここら辺で見たことない制服だけど、どこの学校?」「あ、新学期から春北高校に転校することになってて」「え、ほんと?俺春高生だよ。何年生?あ、俺二年なんだけど」「あ、私は一年生です。先輩なんですね」「そうだねー。あ、でも敬語じゃなくていいよ。俺、そういうの気にしないし。よろしくね、蝶子ちゃん」

にっこりと笑って言うと、蝶子ちゃんも安心したように微笑んだ。笑うと結構可愛い。

「えっと…はい。よろしくお願いします、玉江先輩」

「東でいいよ。俺も蝶子ちゃんって呼ぶからさ」「東先輩ですか」「そうそう!」

「ふふ、はい!」まるで花が咲くように笑った。思わず見とれてしまう。

「あ…のさ」「はい?」俺は、この時自分が何を言おうと思ったのかわからない。とっさに口に出ていた。


「俺も、蝶子さんが好きだよ」


風がまた吹く。静寂が訪れる。唖然とした表情の俺と蝶子ちゃん。

「あっ、えっ!?いや、これはその、間違えたというか、なんでこんな事言ったのかおれもわかんないんだけど…突然ごめんね。ごめん…」慌てて早口に謝る。蝶子ちゃんは黙ったままだ。ちらりと見遣ってまた驚いた。蝶子ちゃんは静かに涙を流していた。

「え!?」

「あれ?なんで…えっ?」蝶子ちゃん自身も驚いていた。「なんで?えっ?」としきりに繰り返す。

「わ、私もごめんなさい。なんか、涙が勝手に…とまん、なく、て。ごめっ、なさ…」嗚咽を漏らし始めた彼女を、思わず抱きしめた。

「!!」「泣かないで」泣かせてるのは俺だろ、とどこか冷静な頭で思いつつ、「蝶子ちゃんが泣いてるところ見たくないよ」と続けた。

「……東先輩は、優しいですね」ふふ、と蝶子ちゃんは笑った。涙声は変わらなかったけど。

「私も、好きです。東さんが…好きです」その声は、なんとなく違う人間の言葉のように思えた。

「…これで、お互い様ですね」また戻った。なんだか不思議だ。

「お互い、わけわかんないですね」笑いながら言う。そうだね、と返すと、もう大丈夫ですよ。と返ってきた。腕から離すと、蝶子ちゃんは照れ臭そうに笑った。目じりに涙が溜まったままだったけれど。

「わけわかんないね」と蝶子ちゃんの言葉を繰り返す。ちょっと笑えてきた。蝶子ちゃんも誘われるように笑い始めた。

暫く笑った後、蝶子ちゃんは俺を見つめる。

「えっと…。改めて、これからよろしくお願いします、東先輩。」

「うん。よろしくね、蝶子ちゃん。」





こうして、俺たちの物語の幕が再び上がったのだ―――


これで最後になります。書き溜めていたものを一気に解放しました…!

現代で再開した二人で終わりです。続きを書く気力も残っていないというのと、現代版の二人がどう前世の記憶と今の記憶を持ったうえで恋愛をするのか、というのがとても難しく、描けないだろうという判断からです…。

でも、これからきっと、また恋を始めるんだと思っております。


『東の蝶』を書き始めてから放置していた期間も含めて約四年間書き続けていたんですね…。もっとはやく書いていれば第二部もできたかもなあと思うとちょっと後悔しています。

テーマは『低い身分同士の恋』というまんまのモノでしたが、「色子」と「奴隷」はそれぞれ低い身分でも、やっぱり扱い方が違ったりするのかなあと考えてみたりしてました。

なんとかプロット通り、予定通りの結末に行きついたのは満足しています。早足感は否めませんね笑


新しい作品ですが、また恋愛になりそうです。どんだけ好きなんだ…。

もしかしたら小話を挟んでからの長期作品になるかもしれません。予定は未定になってます。


最後に、ここまで読んでくださった皆様に心からの感謝を申し上げます。本当に、ありがとうございました!

では、次回の作品でお会いしましょう。


明夢 優深

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